【答】
平成19年に組合のガバナンスの向上と共済事業の健全性の確保を図るために組合法の改正が行なわれ、監査制度も大きく変わりました。一般組合の監査について述べます。
■監査制度の改正
平成19年度の組合法等の改正により、組合の自治運営が効果的に機能するように見直すとともに、共済事業については、その健全性を確保するための措置を講ずることとなり、組合の監査制度を強化すべく次の点が改正された。①大規模組合(構成員が1000人を超える組合)の取扱い②員外監事制度の導入③監事の欠格事由と任期の変更④業務監査権の取扱い⑤監事による理事会議事録の署名⑥監事に対する損害賠償責任とその免除。
■員外監事制度
大規模組合については、組合員による自治運営が機能しにくいため、組合運営の状況を第三者による監査を受けるよう、監事のうち1人以上は組合員以外の者とすることが義務付けられた。 なお、員外監事の導入が義務付けられる組合の監事については、業務監査権が付与された。大規模組合の員外監事は監査の専門性の見地から選任されることが望ましい。
■監事の資格と任期
組合法においては、会社法の規定に違反し、刑の執行終了から2年を経過しない者等が役員となることを禁止する役員の欠格事由を定め、監事については会社法335条を準用している。 理事の業務運営を監視する立場にある監事の権限を強化すべく、監事の任期を定款に規定することを前提に3年以内から4年以内に延長することとなった。
■業務監査権
理事による業務運営に対する監視機能を強化するため、会計監査のみに限定されていた監事の権限を拡大して業務監査権を付与することとなった。 一方、大規模組合でない、組合員数が1000人以下の組合は、定款において監事の監査範囲を会計に限定できることとし、理事、監事の権限・義務を明確化している。(信用組合および同連合会は既に監事への業務監査権は付与されている。)
■監事の議事録署名
業務監査権を有する監事が存在する組合については、監事による理事会の招集請求が可能であるが、監事の権限が会計に限定されている場合は不可能である。したがって監事の権限が会計監査に限定されている場合、理事が組合の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、またはする恐れがあると認められるときには、組合員による理事会の招集請求ができることとし、理事会の開催を請求した組合員は理事会に出席し意見を述べることができるようになった。 また、監事に業務監査権を付与することに伴い、監事による理事会への出席及び意見陳述を規定することから、理事会に出席した監事については理事会の議事録への署名を義務付けることになった。 さらに、総会の決議に当たり、組合員と理事・監事の質疑応答の機会を確保し、健全な組合運営がなされるように総会における理事・監事の説明義務が規定された。
■決算関係書類の提出と監査
組合は、事業年度終了後遅滞なく、事業報告書と決算関係書類を監事に提出し、監事の監査を受け、監事から監査報告を受領しなければならない(組合法第40条)。 しかし、監査権限限定組合(各事業年度開始時点で構成員数が1000人を超えない組合で、定款に監事の職務を会計監査に限定する旨を規定している組合)については、監事に会計監査の権限だけを付与し、業務監査権限を付与しないようにすることができるもものとされた。
■監事について組合法規則の規定
【決算関係書類に係る監査報告】 第89条 監事は、決算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする監査報告を作成しなければならない。①監事の監査の方法及びその内容②決算関係書類(剰余金処分案又は損失処理案を除く。)が当該組合の財産及び損益の状況をすべて重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見③剰余金処分案又は損失処理案が法令又は定款に適合しているかどうかについての意見④剰余金処分案又は損失処理案が当該組合の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるときは、その旨⑤監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由⑥追記情報(ⅰ正当な理由による会計方針の変更ⅱ重要な偶発事象ⅲ重要な後発事象のうち、監事の判断に関して説明を付する必要がある事項又は決算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項) 【事業報告書に係る監査報告】 第90条 省略 2 前項の規定にかかわらず、監査権限定組合の監事は、前項各号に掲げる事項に代えて、事業報告書を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を作成しなければならない。 【監事の監査報告の通知期限】 第91条 *特定監事は、次に掲げる日のいずれか遅い日までに、*特定理事に対し、第89条題1項及び前条第1項に規定する監査報告の内容を通知しなければならない。 (1) 決算関係書類及び事業報告書の全部を受領した日から4週間を経過した日 (2) 特定理事及び特定監事の間で合意により定めた日があるときは、その日 2 決算関係書類及び事業報告書については、特定理事が前項の規定による監査報告の内容の通知を受けた日に、監事の監査を受けたものとする。 3 前項の規定にかかわらず、特定監事が第1項の規定により通知をすべき日までに同項の規定による監査報告の内容の通知をしない場合には、当該通知をすべき日に、決算関係書類及び事業報告書については、監事の監査を受けたものとみなす。 *「特定理事」とは通知を受ける者を定めた場合はその者。そうでない場合は決算関係書類等の作成業務にかかわった理事。「特定監事」とは通知すべき者を定めた場合はその者。そうでない場合は監事全員。
■監査権限定組合の監査報告書様式例(組合法第40 条、組合法規則第89 条) |
監査報告書
中小企業等協同組合法第40 条第5 項により組合から受領した第○○期財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案(損失処理案)を監査した。 なお、当組合の監事は、定款第○○条(監事の職務)に定めるところにより、監査の範囲が会計に関するものに限定されているため、事業報告書を監査する権限を有しない。
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1. |
監査方法の概要 |
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決算関係書類の監査のため、会計に関する帳簿、書類を閲覧し、計算書類について検討を加え、必要な実査、立会、照合及び報告の聴取、その他通常取るべき必要な方法を用いて調査した。 |
2. |
監査結果の意見 |
(1) |
財産目録、貸借対照表、損益計算書は、組合の財産及び損益の状況の全ての重要な点において適正に表示している。 |
(2) |
剰余金処分案(損失処理案)は法令及び定款に適合している。 |
3. |
追記情報(決算関係書類について記載すべき事項がある場合) |
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平成○○年○○月○○日 |
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○○○○協同組合 監事 ○ ○ ○ ○ 印
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【作成上の留意点】 |
1 . |
「監査の根拠条文」について=①協業組合:中小企業団体の組織に関する法律第5条の23第3項において準用する中小企業等協同組合法第40条第5項②商工組合:中小企業団体の組織に関する法律第47条第2項において準用する中小企業等協同組合法第40条第5項③商店街振興組合:商店街振興組合法第53条第5項 |
2 . |
「監査結果の意見」について=剰余金処分案(損失処理案)が組合の財産の状況その他の事情に照らして不当であるとき、又は理事の職務の遂行に関し不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があったときは、その旨を追加記載する。 |
3 . |
「追記情報」について=正当な理由による会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象その他の事項であって、監事の判断に関して説明を付す必要がある事項や決算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項を記載する(組合法規則第89条第2項)。 |
4. |
「署名」について:監事全員が行う。 |
5. |
「監査日付」について:監査報告を作成した日(組合法規則第90条第1項5号) |
6 . |
監査報告の通知期限:次のいずれか遅い日(組合法規則第91条)=①決算関係書類及び事業報告書の全部を受領した日から4週間を経過した日②特定理事及び特定監事の間で合意により定めた日があるときは、その日 |
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