【答】
ポイント★組合の経営計画は、総会の承認事項
社長と理事長はともに組織のトップですが、実際にはかなり違いがあります。 一 社長と理事長の違いを生む根本 会社を構成するのは株主です。組合を構成するのは組合員です。株主は株価と配当にしか興味がありませんが、組合員は組合事業そのものに興味を持っています。 この株主と組合員の違いが社長と理事長の違いを生む根本ということになります。根本的な違いをさらに際立たせているのが、中小企業では社長がオーナーであるという点です。 組合は一人の出資は二五%までで、理事長が組合の所有者になることは有りえませんが、中小企業では社長が会社の所有者ということは珍しくありません。 二 社長の力の源 中小企業の社長の力の源はオーナーである点にあります。 このパワーを背景に、社長は役員人事も経営計画も自由に決めることができます。社長の交代も自分の意思で決め、長期にわたって社長を務め、会社経営に専念し、会社の仕事を熟知した存在です。 三 理事長の力の源 組合の場合にも、親会社が協力会社を組織し、親会社の社長が理事長になるケースのように、大きな力を持った理事長もまれにいます。しかし、一般的には、組合員の支持で選ばれた理事の中から、互選によって理事長が決まるというのが普通です。パワーの源は、組合員・理事からの支持です。 四 実務上の相違点 以上のような違いから生ずる実務上の相違点は、経営計画と役員人事にあらわれます。 社長は、経営計画を自分で立案し、実行し、失敗の責任も社長が負います。 理事長は事業計画・収支予算を理事と事務局の協力を得て立案し、総会で組合員の承認をもらいます。組合員は事業の利用者として組合経営に直接タッチできるわけです。その計画の範囲内で業務執行するのが理事長の役目です。 役員人事についても相違しています。副理事長などの役付理事は理事会の互選です。会社も同じですが、実態は社長の指名を取締役会で承認するだけです。組合では、理事長が指名してもそのまま承認されるかは疑問です。 社長も理事長も、会社・組合の業務に関する一切の権限を有する存在ですが、その権限の実態には大きな違いがあるように感じます。組合は民主的な運営が確保された法人といえます。
(中小企業組合理事のためのQ&A/清水透著・2010年5月(新訂)第1版第1刷発行より転載)
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