【答】
組合には、理事及び監事を役員として必ず置かなければなりません。役員は組合の業務遂行及びその監督に関する必要常置の機関であって、定款の規定、総会の議決をもってしても、これを廃止することはできません。 役員は、組合との委任関係に立つことから、たとえ総会の選挙で当選しても、それは単に組合からの委任契約締結の申し込みに過ぎないので、本人が役員に就任する旨を承諾しなければ役員とはなりません。また、就任を強制されることもありません。 ●理 事 ■ 理事の職務権限 組合の理事の職務権限は、代表権を有する代表理事と代表権を持たない一般理事とでは大きな違いがあります。 ▼代表理事 代表理事は、理事会において決定した業務を現実に執行する職務を担当する必要常置機関であり、一般の理事との関係は、信任に基づく一種の復代理人であります。 代表理事(理事会で選任)は必ず理事でなければならないことから、理事(総会で選任)の地位を失えば当然に代表理事の地位を失いますが、逆に代表理事の地位を失っても理事の地位を当然には失うことはありません。 (1)組合代表権=代表理事の組合代表権は、広範であって定款および総会の決議の範囲内において、組合の業務のすべてに及びます。すなわち組合の事業に関する裁判上または裁判外の一切の行為を行なう権限を意味し、したがって、代表理事が組合のために行った行為は原則としてすべて組合の行為となり、その効果はそのまま組合に帰属することになります。 ただし、理事と組合間で行われる訴訟行為については制限があります。 また、代表理事は定款または総会の議決によって禁止されない限り、特定の行為につき他人に代表権を委任することができます。 代表理事は、必要に応じて複数人置いてもよいが、数人の代表理事が共同して組合を代表する「共同代表」制は廃止されました。 (2)業務遂行権=代表理事は、代表権を有する範囲内において自ら業務遂行の決定をし、かつこれを実行する権限を有します。その主なものは次のとおり。 ①組合の事務全般を処理し、組合の内部組織(事務局)の維持管理を行なう②総会の招集決定権は理事会にあるが、理事会の決定にしたがう具体的な招集手続きは代表理事が行なう③定款および規約を各事務所に、組合員名簿を主たる事務所に、総会および理事会の議事録を10年間主たる事務所に、その謄本を5年間従たる事務所に備え置くこと④通常総会の開催日の2週間前までに、決算関係書類、事業報告書を主たる事務所に、それらの写しを従たる事務所に備え置くこと⑤決算関係書類に監事の監査報告を添えて通常総会に提出すること⑥理事会を招集し、主宰すること⑦通常総会終了の日から2週間以内に、行政庁に対し決算関係書類を提出すること。⑧登記必要事項を登記すること。 ▼一般理事 代表権のない理事の職務権限は、次のようなものがあります。 (1)理事会に出席し(場合によっては書面により)組合の業務遂行について意見を述べ、理事会の議決に加わること。 (2)代表理事を選任すること。 (3)理事会を招集すること(定款にとくに招集権者を定めていない場合は、原則として各理事に招集権がある。なお、招集権者を定めている場合であっても、議題を記載した書面をもって理事会の招集を請求することができる。また、招集を請求したにもかかわらず一定期日までに招集されない場合は、自ら招集することができる)。 なお、理事は理事会の承認を得なければ組合と契約することはできません。 ●監 事 平成19年に組合のガバナンスの向上と共済事業の健全性の確保を図るために組合法の改正が行なわれ、監査制度も大きく変わりました。 ■ 監査制度の改正 平成19年度の組合法等の改正により、組合の自治運営が効果的に機能するように見直すとともに、共済事業については、その健全性を確保するための措置を講ずることとなり、組合の監査制度を強化すべく次の点が改正されました。①大規模組合(構成員が1000人を超える組合)の取扱い②員外監事制度の導入③監事の欠格事由と任期の変更④業務監査権の取扱い⑤監事による理事会議事録の署名⑥監事に対する損害賠償責任とその免除。 ■ 員外監事制度 大規模組合については、組合員による自治運営が機能しにくいため、組合運営の状況を第三者による監査を受けるよう、監事のうち1人以上は組合員以外の者とすることが義務付けられました。 なお、員外監事の導入が義務付けられる組合の監事については、業務監査権が付与されました。大規模組合の員外監事は監査の専門性の見地から選任されることが望ましいとされています。 ■ 監事の資格と任期 組合法においては、会社法の規定に違反し、刑の執行終了から2年を経過しない者等が役員となることを禁止する役員の欠格事由を定め、監事については会社法335条を準用しています。 理事の業務運営を監視する立場にある監事の権限を強化すべく、監事の任期を定款に規定することを前提に3年以内から4年以内に延長されました。 ■ 業務監査権 理事による業務運営に対する監視機能を強化するため、会計監査のみに限定されていた監事の権限を拡大して業務監査権が付与されることになりました。 一方、大規模組合でない、組合員数が1000人以下の組合は、定款において監事の監査範囲を会計に限定できることとし、理事、監事の権限・義務を明確化しています。(信用組合および同連合会は既に監事への業務監査権は付与されています。) ■ 監事の議事録署名 業務監査権を有する監事が存在する組合については、監事による理事会の招集請求が可能ですが、監事の権限が会計に限定されている場合は不可能です。したがって監事の権限が会計監査に限定されている場合、理事が組合の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、またはする恐れがあると認められるときには、組合員による理事会の招集請求ができることとし、理事会の開催を請求した組合員は理事会に出席し意見を述べることができるようになりました。 また、監事に業務監査権を付与することに伴い、監事による理事会への出席及び意見陳述を規定することから、理事会に出席した監事については理事会の議事録への署名を義務付けることになりました。 さらに、総会の決議に当たり、組合員と理事・監事の質疑応答の機会を確保し、健全な組合運営がなされるように総会における理事・監事の説明義務が規定されました。 ■ 決算関係書類等の監査と提出 *組合は、事業年度終了後遅滞なく、事業報告書と決算関係書類を監事に提出し、監事の監査を受け、監事から監査報告を受領しなければならない(組合法第40条)。 しかし、監査権限限定組合(各事業年度開始時点で構成員数が1000人を超えない組合で、定款に監事の職務を会計監査に限定する旨を規定している組合)については、監事に会計監査の権限だけを付与し、業務監査権限を付与しないようにすることができるものとされた。 *組合は、毎事業年度、通常総会の終了の日から2週間以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を行政庁に提出しなければならない(組合法第105条の2)。 ただし、信用協同組合等は銀行法の規定により、別途提出義務が課せられています。
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