【答】
金融事業は、中小企業が組合という組織に資本力や担保力を結集し、個々では実現できない大きな信用力を創りあげ、組合員の金融上のボトルネックを打開しようというもので、高度成長期までは組合の行う事業のなかでは、最も一般的な事業で、高い実施率をあげてきました。 しかし、わが国経済はバブル期とその崩壊を経験し、金融面では緩和基調が定着するとともに、中小企業専門金融機関の成長、都市銀行の中小企業分野への進出、国や地方自治体等の制度融資の充実などによって、かつてのような中小企業の金融事業は遠のきつつあるといわれています。しかし、今後、中小企業をめぐる金融環境が、より一層好転することがあるとしても、共同事業の中での金融事業の地位の重要性は変わらないと思われます。 それは金融事業が単に組合員の金融円滑化という役割を果たすにとどまらず、金融事業を適切に運用すれば、今日、組合員が直面している経営上の問題点を発見し、解決するのに役立つことが期待されるからです。 それでは、金融事業の種類にはどんなものがあるのでしょうか。
金融事業の種類
金融事業は言うまでもなく、組合員のために、組合が資金の斡旋または貸付を行なう事業です。 また、商工中金との取引で金融事業を行なう場合は、商工中金の株主となり、商工債権の購入、あるいは組合員からの受入金が必要になります。 金融事業を会計処理の上から分類すると次のようになります。 ①資金の斡旋 ②証書貸付 ③手形貸付 ④手形割引貸付 ⑤債務保証 ⑥債権取立 ⑦商工中金株式 ⑧商工債権 ⑨受入金(預り保証金)
■資金の斡旋
商工中金から組合員が直接借入をする場合も、組合は商工中金の株主となることが必要です。 また組合と商工中金との取引では、商工債券を購入することがありますが、資金斡旋の場合は、商工中金から借入をする組合員が直接引き受けることが多いようです。 資金の斡旋の仕方は様々ですが借入実現に組合の力が大であった場合以外は、あまり手数料を徴収しないようです。
■証書貸付
証書貸付は、組合が、組合員から金銭消費貸借契約書又は借用証書を差し入れさせ、貸付を行なう事業です。 証書には、貸付金額・返済期日・返済方法、利率・利息支払方法・担保・保証人などの特約事項を明確に記載できるため、主に、長期貸付に用いられます。 貸付資金については、商工中金からの転貸資金をあてる場合が多いようです。 また、組合として、商工債券を購入するようになるので、購入資金を組合員から受け入れることがあります。
■手形貸付
手形貸付は、金銭消費貸借契約書又は借用証書の代用として、約束手形(貸付手形)を用いる貸付事業です。 貸付資金については、商工中金からの転貸資金をあてる場合が多いのですが、少額な貸付の場合は組合の手持資金(組合員からの出資金のうち余裕資金として保有されている資金であって、貸付のために特に組合員から出資された資金ではない)をあてる場合もあります。 また、手形貸付は、手形を証書の代用に用いるため、貸付利息を先取りすることが多いようです。
■手形割引貸付
手形割引貸付は、組合員が商取引により取得した手形を、譲渡担保として貸付をする事業です。 金融機関では手形割引を割引依頼人に対する与信行為として認識しており、手形割引は、手形を譲渡担保とした割引依頼人に対する与信行為としての実務が定着しており、組合の金融事業でも、手形割引とは考えずに貸付の形態としてとらえています。 手形割引貸付は、組合員が商取引により取得した手形(商業手形)により貸付けるのですから、短期の貸付が多くなります。 貸付金としては、割引の形式で受取った手形を、さらに、商工中金へ持ち込み、再割引の形式で借入れた資金をあてる場合がほとんどです。 なお、手形割引貸付に良く似た手形の動きとして、共同購買事業の商業手形が裏書譲渡の方法で、組合員から組合に譲渡され、さらに組合から商工中金に割引依頼されるものがありますが、これは手形割引貸付ではありません。
■債務保証
債務の保証は、組合が、組合員の債務を保証する事業ですが、これは債務として確定しているわけではなく、債務者が支払い不能の場合に、債務者に代わり支払をする事業です。
■債権取立
債権の取立ては、金融機関の委任を受けて組合員から債権を取り立てる事業ですが、最近あまり事例がないようです。
■商工中金株式
商工中金から資金を借入れる場合には、組合は商工中金の株主にならなければなりません。 組合が、商工中金株式を取得するには資金が必要ですが、この資金は、組合の自己資金により賄われることが原則であると考えられています。 組合の自己資金とは、組合員から受入れた出資金と加入金及び過去の剰余金留保である利益準備金・特別積立金・繰越利益剰余金を合計した純資産勘定のことをいいます。 商工中金株式は、商工中金との取引を継続している間は売却できませんので、安定した資金源で賄われることが、組合の財政上必要だとの考え方からです。
■商工債券
商工債券には、券面額で購入し後日利子を受取る「利付商工債券」(リッショー)と、券面額を割り引いた額で購入する「割引商工債券」(ワリショー)とがあります。 ワリショーは割引料(利息相当分)を先取りしますが、割引料は、ワリショーの償還期日までの利息相当分ですから、購入時に受取利息として処理せず、償還期日が到来してから処理します。 また、ワリショーの割引料に対しても、源泉所得税が課税され、ワリショーの購入価格は、源泉所得税を差し引いた金額になっています。この源泉所得税は、償還期日経過後であれば、組合の納める法人税から差し引くか、組合の納める法人税がないときは還付されることになっています。
■受入金
組合の行う金融事業では、商工中金からの転貸資金を借入れることが多く、その場合組合が商工中金の株主になることが必要であり、さらに、商工債券を購入する場合が多いようです。 株式取得については先に述べたように、組合の自己資本で賄うことが原則とされています。 しかし、組合によっては、自己資本が少なく、株式取得金額に満たない組合もあり、このような場合は取得に必要な資金を調達するため、組合員から何らかの名目で資金を受入れることになります。 また、商工債券については、組合の自己資本により賄われることは少なく、組合員からの受入金で賄われているようです。 組合員からの受入金は、金融事業に多くみられますが、金融事業以外の場合たとえばチケット発行事業、会館建設事業、共同施設建設事業などでも受入れる場合があります。 受入金の会計処理は、「預り金」として処理する場合が最も多く、次に「借入金」として処理される場合もあります。 預り金としての受入は、組合員に貸付を行なう場合に、貸付金に対する一定額を受入れることがあり、その受入金を処理するために預り金が用いられます。 借入金の受入は、組合の事業資金が不足するときに、資金に余裕のある組合員から借入れることがあります。 その他預り保証金や出資預り金等受入金の受入れは種々な方法により行なわれておりますが、組合法第112条で、組合が、預金もしくは定期積金の受入をすることを禁止していますので念のため申し添えます。
【リンク】商工中金
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