【答】
まず、減資には①出資持口数の減少、②出資1口の金額の減少、③組合員の脱退の3つの方法があります。
①出資持口数の減少
組合員の持ち口数を減少し、その分だけ払戻しを行うもの。
出資口数の減少は、組合員がその地位を保持しながら、自己の持分の一部について払戻しを受けるものであるから、これを組合側からみれば、財産的には、一部の組合員が自由脱退した結果と同様の状態に相当すると考えられる。この点、組合員数の減少を伴う自由脱退及び組合財産の減少を伴わない持分の譲渡と異なる。 なお、出資口数の減少は、組合員の絶対権であるから、組合は、定款をもってしてもこれを奪うことはできないし、また、その手続、方法を定款で定める義務がある。 (1)組合員が出資口数を減少できる場合を次のように法定しているので、これに該当しないものは、定款の定めをもってしても減少することができない。 Ⅰ.事業の休止…これは、組合員が、組合員資格事業の全部を、再開する意思を有しながら、一時停止している状態をいう。つまり、事業を休止した場合には、組合の共同事業を利用する必要がないため。 Ⅱ.事業の一部を廃止…これは、組合員が、組合員資格にかかる事業を再開する意思を有せずに縮小した場合をいう。全部を廃止すれば、組合員資格の喪失となるから法定脱退となる。これに該当する場合に減少を認める趣旨は、組合の共同事業の利用が減少すると考えられる点にある。 Ⅲ.その他やむを得ない事由…やむを得ない事由は、個々の場合に応じて理事会が認定することになるが、企業組合の従事組合員、信用協同組合の組合員たる勤労者等は、事業の休廃止に該当することがないから、この規定により、一身上の重大な理由が発生した場合に出資口数を減少し得ることとなる。 (2)出資口数の減少請求に関する手続方法は、定款で定めなければならない。その定めとしては単なる手続的なもののほか、自由脱退の場合に準じた予告制度の採用、1事業年度において減少し得る最高口数の制限等を内容とすることも許されると解される。 (3)減少の時期は、事業年度の終わりである。したがって、減少の請求はいつでもできるが、払戻請求権の取得は事業年度の終わりとなる。すなわち、持分の額は、事業年度末の組合財産によって定まるからである。 なお、組合は、払戻しの停止処分をすることができない。なぜなら、組合員は出資口数を減少してもなお組合員たる地位にとどまる関係上、脱退した組合員のごとく組合との関係が断たれないからである。
②出資1口の金額の減少
これは組合事業の縮小などにより払込出資総額が過大となった場合や、組合に損失が生じ、純財産が減少した場合など、払込出資総額を実情に合致させるために実施するもの。(※出資金が減少するため信用力が低下することとなり、組合員のみならず組合の債権者にも重大な影響を与える。) 出資1口の金額は、定款の絶対的必要記載事項であり、同時に登記事項でもあるから、これを減少するには、総会で定款の変更を議決し、定款の変更につき所管行政庁の認可を受け、さらに変更の登記をしなければならない。 組合は、出資1口金額の減少の議決をしたときは、その議決の日から2週間以内に財産目録・貸借対照表を作成し、主たる事務所に備え置かなければならない。 組合員及び組合の債権者は、組合に対し、その業務時間内はいつでもこれらの書類の閲覧を請求することができ、組合は正当な理由がないのにこれを拒んではならない。 出資1口の金額の減少を行うことができる場合を法は明記していないが、概ね二つの場合がある。すなわち、第一は、前述のとおり組合の事業の縮小等により予定の出資額を必要としなくなったときに、組合員の未払込出資金の払込義務を免除するために、未払込出資金相当額を減少する場合であるが、単に帳簿上の減少となるに過ぎない。第二は、組合の財産に欠損を生じたとき、出資額を純財産額と一致させて剰余金の算出を可能にするために、いわゆる払込出資金切捨てを行う場合であり、組合財産に実質的な減少をきたすこと等である。 また、組合が出資1口の金額を減少する場合には、組合の債権者は、異議を述べることができる。この場合には、組合は、①出資1口の金額を減少する旨、②債権者が一定の期間内(1か月)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、預金者、定期積金の積金者その他政令で定める債権者以外の知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない(官報公告のほか、日刊新聞紙公告又は電子公告を行った場合には各別の催告は不要となる。)。 ③組合員の脱退 (1)持分の払戻し…組合員は、組合を脱退すると同時にその持分の払戻請求権を取得する(法19条1項5号の規定による脱退を除く。)。この権利は、組合員がまだ脱退せずに組合員としての地位にある間は持分払戻しの期待権に過ぎないが、一旦、組合を脱退したときは、通常の組合債権者としてのいわゆる第三者的権利となるのである。持分払戻請求権は、組合員の絶対権であるが、その権利の行使は「定款に定めるところにより」行わなければならず、また、「持分の全部又は一部の払戻を請求することができる」とあるので、定款に一部払戻しの規定を置くことはできるものと解されている。したがって、定款の規定いかんによって、全部の払戻しを受ける場合もあり、或いは、その一部だけしか受けられない場合もある。持分の一部の払戻しとしては、例えば、出資額、帳簿上の組合財産額、帳簿上の組合財産額に土地の評価益の一部を加算した額、持分の一定割合に相当する額、などを限度として払い戻すような場合、或いは除名によって組合を脱退した組合員に対して通常の脱退組合員に対する払戻金額の半分だけを払い戻すような場合がある。なお、除名の場合でも、まったく払戻しを行わないということはできない。また、組合と組合員が互いに認めれば払戻しは一時に全額とせずに分割して行うこともできる。 (2)持分の算定…脱退した組合員の持分は、その脱退した事業年度の終わりにおける組合財産によって算定される。この場合の財産の評価は、協同組合の事業の継続を前提とし、なるべく有利に一括譲渡する価額、すなわち時価によるべきものとされている(昭和44年2月11日、最高裁判決)。 なお、持分払戻請求権は、持分の算定後に行使されることになるから、自由脱退の場合は問題ないが、法定脱退の場合は脱退と同時に請求権を取得しても事業年度末まではこれを行使することが出来ない。したがって、この請求権は停止条件付の請求権であるといえる。 持分の算定方法については、法で特に定めていないから、組合の定款で自由に定めてよい。一般には、改算式持分算定方法(均等式持分算定方法)と加算式持分算定方法の二つがある。※本誌前月号参照 改算式は、出資1口につき各持分が均等となる方法であり、具体的には、組合の正味財産の価額を出資総口数で除することにより出資1口についての持分額を算定する方法である。この方法は簡便であるが、出資1口当たりの持分額を維持するため、原始加入者及び増口分の出資払込みに際しては、持分調整金としての加入金を徴収する必要が生じる。ただし、組合の正味財産が出資金を上回っている場合でも、定款の規定により脱退者の持分の払戻しを出資額限度としている組合は、持分を調整する必要が生じないので、持分調整金は徴収できない。持分調整金としての加入金は、法人税法上資本等取引に該当し、益金不算入となる。 加算式は、各組合員について事業年度ごとに、組合の正味財産に属する出資金、準備金、積立金その他の財産についてその組合員の出資口数、払込済出資金額又は事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)する方法である。この方法によるときは、各組合員の持分は、加入時期、事業の利用分量等により不均一となり、その計算も事務処理も複雑となるが、持分調整金の問題は生じない。 (3) 損失分担額の徴収…持分の計算に当たって、組合財産をもって組合の債務を完済することができないとき、つまり欠損を生じている場合には、組合は定款の定めるところによって、脱退した組合員に対して、未払込出資額を限度として、その費用に帰すべき損失額の払込みを請求することができる。したがって、出資金額の払込みを完了した組合員は損失額を払い込む必要はない。有限責任の原則から推して当然のことである。
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