【答】
■組合員の一般的性格 事業協同組合および商工組合の組合員は、定款で定める範囲の地区内に事業場を有し、定款所定の資格事業を行っている者であればよく、その者が法人であるか個人であるかは問われません。 また、協業組合の組合員については、その資格が事業者たる会社または個人に限られており、会社以外の法人、たとえば社団法人や協同組合などは協業組合に加入することはできません。 会社においては株主などその構成員たる社員の資格について何らの制限がないのに対し、これら各種組合の組合員資格について一定の制限が置かれているのは、組合がもっぱらその事業を組合員のためにのみ行うという独自の性格を有するものだからです。 すなわち組合は、これに参加する組合員の事業を補完・発展させるための組織であって、会社のように社員の投下した資金を自由に運用して、その利潤を分配するといったものでない点において、資格制限を当然に伴います。
■地区 組合員は、定款に定められた一定の地区内に事業場を有し、あるいは住居を有していなければなりません。定款にどのような範囲の地区を定めるかは、それぞれの組合の事情により原則として自由ですが、商工組合の場合は、業界団体としての性格上、あまりにも小さなものは設立しても意味がありませんので、その地区は1または2以上の都道府県の区域に限られております。 なお、企業組合や協業組合は、それが一個の独立した企業体としての性格を有するものですから、会社と同様定款上地区を定める必要はありませんが、あえて定款に地区を定めることは差し支えありません。この場合は、その組合員はその地区内の者でなければならないことは言うまでもありません。
■資格事業 組合員がどのような事業を行っているかは、組合員資格として重要です。定款に定められた事業を行っている者だけしか組合員になることはできないからです。定款にどのような資格事業を定めるかは原則として自由で、その定め方には広狭さまざまなものがあり得ますが、どのような目的で、どのような共同事業を行おうとするかによって、資格事業の範囲もおのずから定まってきます。
すなわち、組合の種類や実施する事業の目的、内容により、その資格事業が単一のものに限られる場合もあれば、異業種にまたがる場合も出てきます。一般的には、共同加工、共同生産、共同販売、共同購買などの事業を行う組合にあっては、組合員資格を同業種の事業者とすることが多いですし、共同受注や共同研究開発などの事業を行う場合には、資格事業を必ずしも同業種のものに限る必要はなく、むしろ異業種で行なうことによって事業効果が高まることが期待されます。
また、共同給食や保養施設の設置などの福利厚生事業を行う場合や共済事業を行う場合は、事業の性格上、より多くの組合員の参加を要することから、その組合員資格もおのずから広範な業種に及ぶこととなり、もっぱら地域的な制限のみに傾くこととなります。
さらに、商工組合のように業界の改善発達を主たる目的として事業を行う組合にあっては、資格事業も単一業種に限らざるを得ないでしょうし、組合員の事業を協業化しようという協業組合にあっては、その資格事業は単一か、せいぜいその関連業種に限らざるを得ないということになります。
このように、組合員の資格事業の決定にあたっては、純粋に単一事業のみとするか、関連業種をも含めるか、あるいは広範に異業種にもわたらせるかは、実施しようとする共同事業の目的、内容に応じて慎重に検討することが必要です。
■中小企業者の範囲 組合員資格として、事業協同組合等の場合、小規模の事業者であることが法律上定められております。これは、組合が中小企業者のための組織制度として設置されたものである以上当然のことで、独占禁止法との関係でも重要な意味を有します。
さて、法律上の中小企業の範囲(小規模事業者の基準)については、その組合員たる事業者が次のいずれかに掲げる者であるものです。 ①資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については5000万円、卸売業を主たる事業とする事業者については1億円)を超えない法人たる事業者。 ②常時使用する従業員の数が300人(小売業を主たる事業とする事業者については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については100人)を超えない事業者。 もっとも、事業協同組合等の場合、この基準のみによって小規模事業者であるか否かの判定がすべて行なわれるわけではなく、この範囲を超える規模の事業者であっても、実質的にみて小規模の事業者と認められる者は、組合員となることができます。しかし、その者が実質的にみて小規模の事業者であるか否かの最終判断は、公正取引委員会の権限に委ねられております。
■支店の組合員資格について Q.小売業を営む者で組合の地区内に支店があって、当該支店は従業員50人以下である。地区外の本店は従業員50人以上で、しかも資本金が5000万円を超えている場合、この支店は組合員資格に疑義があるか。あるとすれば公取委へ届出る必要があるか。
A.組合員資格に関する使用従業員の数は、本支店合わせたものとさているから、この場合明らかに50人を超え、しかも資本金が5000万円を超えているので、公取委への届出が必要である。 ただし、組合員たる資格は従業員数、資本の額または出資の総額が絶対的要件ではなくその事業者の資本力、市場支配力、組合の内容等諸般の実情を勘案して判断すべきで、当面その判断は組合自体が行うことになる。 なお、公取委への届出の様式・内容については、「中小企業等協同組合法第7条第3項の規定による届出に関する規則」(昭和39年2月7日公正取引委員会規則第1号)に定められている。
■商工会議所加入を組合員資格要件とすることについて Q.商工会議所の会員であることを、組合員資格とすることは適当か。
A.事業協同組合は、組合員の経済的地位の向上を図るための組織として、組合員が共同して経済事業を行うものであり、したがって組合員の資格の決め方は経済的要件に限るのが適当で、「会議所の会員であること」と規定することは、経済的見地からみて必要性が認められず、いわゆる資格事業という概念に該当しないと思われるので、適当でないと考える。
■農業者の組合員資格及び事業場の定義について Q.管内の郡を一円とした農業者で、乳牛飼育および養鶏を行なう者が、飼料の共同購入、生産品の共同販売等を主な共同事業として、組合を設立しようと準備しているが、定款に次の疑義があるのでお答えいただきたい。 〔定款〕第8条 本組合の組合員たる資格を有する者は左の各号の要件を備える小規模の事業者とする。 1 畜産を行なう事業者であること 2 組合の地区内に事業場を有すること 1号について、加入申込者全員が農家でそれぞれ乳牛1・2頭所有し、牛乳の販売をしているものまたは養鶏を行い、卵を販売しているもの等であるが、定款は畜産を行なう事業者であり、これを認めてよいか。 2号については組合員になろうとする者全員が組合を通じて牛乳および鶏卵の共同販売を行なっているものであるが、事業場とはこれらの畜舎等と認めてよいか。
A.農家であっても、そのものが畜産または養鶏の事業を行っているときは、畜産または養鶏の事業者として事業協同組合を組織することは差し支えないが資格事業を「畜産または養鶏を行なう事業者」とすることが適当である。 また、畜舎等を事業場と解しても差し支えない。
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