テーマ : 組合と組合員相互間の会計と税務
補助事業名 | 令和元年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 千葉県室内装飾事業協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 藤間 健史 | |
住 所 | 千葉市中央区本千葉町10-20 DIK703 | |
設 立 | 昭和49年6月 | |
業 種 | 内装工事業 | |
組合員 | 51人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2627) | |
専門家 | 日新税理士法人 副所長 古知 潔(税理士) |
背景と目的
組合では毎年1回決算を行い、その内容を審議するため、事業年度終了後に通常総会を開催する必要がありますが、組合決算において、一般法人とは異なった組合特有の会計処理や税制上の措置があります。また、組合員会計は、企業会計と異なった処理をしますので、組合と組合員相互間会計と税務を理解するために研究会を実施しました。
事業の活動内容
①一般賦課金(組合費)の徴収を年の中途で停止したいとき
事業年度の中途において残余期間の賦課金徴収の全部または一部を停止したいと考えることは、その年度の事業利益が予期以上の場合など往々にしてあることです。
しかし一般賦課金の賦課徴収方法は通常総会で決定された事項ですから相応の手続きを経て訂正する必要があり、臨時総会を開催してその減額時期や減額金額についての決議を経ることが考えられます。ただし、この訂正は組合員の負担を増すことではないのですから、理事会の決議で実行することも実務的と考えます。そしてその決議内容を書面で組合員に通知して賦課金の全部または一部の徴収停止を実現します。組合員側では特段の処置は不要ですが、一年分の賦課金を前払いしている場合などは、その精算が必要なことは当然です。
②組合が組合員に支給するコロナ禍見舞金
組合が組合員に支給するコロナ禍見舞金などの災害見舞金は、税務上組合の交際費には該当せず、その災害実態に相応の支出額であれば会計上の勘定科目を問わず全額を組合の経費(損金)として扱います。また、この種の見舞金は慣行上領収書を求めがたく、そのような場合には組合が支出日・支出先組合員名・支出額を記録して保存すれば足りるものとされます。これを受取った組合員側ではその金額を雑収入等として収入計上します。消費税の取扱いは、見舞金=課税対象外です。
③組合が会議出席者に支給する日当
日当とは組合会議出席時に要する諸費用に充当するために組合が支払う金員です。具体的には往復交通費・食事代・飲料代などです。日当の額は日帰りの場合、一泊の場合など実態に即して組合旅費規程等に定める必要があり、定められる金額は社会通念上妥当な額の範囲内でなくてはなりません。具体的に、受け取った個人が出張に必要な諸費用を払ってなお残余が生ずるような額は不相当に高額な日当として、受取者は次に述べる非課税の扱いは受けられません。 組合は適正な額の日当は旅費交通費として経費処理します。消費税は課税仕入として処理します。
これを受取った個人は非課税の所得として税務上何らの処置も必要ありません。
④組合の業務組織(部会・委員会等)に属する各人に支給する手当
組合の業務執行組織は組合の実態に応じて、受注委員会・共同購買部会・総務委員会等々のさまざまな業務組織が考案され実働しています。これらの部会や委員会に属して活動した個人に支払う金員は給与として処理します。所定の所得税の源泉徴収も必要です。これを受取った個人は給与所得として、他に給与所得がある場合には確定申告をして源泉徴収された税金の精算を行います。組合の理事長他の役員が部会や委員会に属していて同様の給与を得る場合には、税務上組合の経費にならない役員賞与に該当とされるケースも考えられますので注意が必要です。
⑤組合と組合員相互間の領収書発行に伴う印紙税
受取書(領収書)には印紙税法の定めにより二百円から二十万円までの収入印紙の貼付が必要です。同時に印紙税法は「記載受取金額が五万円未満の受取書」と「営業に関しない受取書」に該当するものは印紙税の非課税物件と定めています。従って協同組合等各種中小企業組合と組合員との取引行為は「営業」ではなく、そこに交わされる領収書に収入印紙の貼付は不要なのです。組合と組合員以外の者との取引は当然に「営業」に該当しその領収書に印紙の貼付が必要です。つまり、同じ物品を組合が販売したとして、その販売先が組合員であるか組合員以外であるかによって印紙貼付の要不要が分かれることになるのです。
⑥組合が組合員に支払う出資配当金
組合は毎事業年度末の剰余金処分として組合員に出資配当金を支払うことができますが、その配当額の計算上の留意点は中途加入の組合員に対する配当額の計算です。この計算は加入月から事業年度末までの在籍期間に応じた按分計算によります。在籍六か月なら通年在籍の組合員に対する配当額の二分の一の配当です。次に中途脱退の組合員に対する配当は法定脱退か自由脱退かを問わず、在籍期間按分は行わずに配当金を支払います。出資金の払戻しはいずれの場合も事業年度末に行うからです。
⑦組合が組合員に支払う事業利用分量配当金
事業利用分量配当金は、組合員が協同組合に対しその共同経済事業の利用の際に支払った手数料や代金等の対価の割戻しです。これは、組合がその事業年度の決算を確定するプロセスでこの事業利用分量配当金額を定め、剰余金処分案に記載して通常総会の承認を得れば、組合のその事業年度の法人税額の計算上その配当額を損金とすることができる、いわば適法な組合利益の調整ツールなのです。
⑧組合員の持分
組合員の持分とは組合定款にも明示されているように、組合員が組合財産に対して有する経済的な権利です。具体的には組合の正味資産を出資総口数で割り算して出資1口当たりの持分額を求めます。つまり、組合財産目録が示す「差引正味資産」の額を、その事業年度末の出資総口数で割り算するのです。
⑨組合員持分開示のススメ
組合の正味資産は先にみたように財産目録に組合の資産から負債を差し引いたところの「差引正味資産」として明示されています。ここで注意したいのは組合の財産の中に土地や株式がある場合、それらは取得時の価額で記載されていることです。取得後の経済変動によりそれらの「時価」は値上がりしたり値下がりしたり、財産目録記載額とは大きく異なっていることもマレではありません。このような場合はその土地や株式を時価に直して⑧の持分額を計算しなくては、誤った持分情報を組合員に伝えることになりかねません。そこで取得時の価額から変動の大きい資産については時価に評価し直して持分計算を行い、組合財産目録の末尾に注記してリアルな持分情報を組合員に伝えるようにします。注意することは、例えば土地の価額を時価に直して財産目録に記載するのではなく、注記の形式で時価による持分額を示すことです。
(注1)財産目録に示す正味資産に対する出資一口当たりの持分額は×××円です。
(注2)財産目録中の土地につき固定資産評価額を時価として計算した正味資産は〇○○円、この出資一口当たりの持分額は×××円です。などと財産目録の末尾余白に注記します。
時価評価の基準は組合財産の実態に応じ合理的に定め総会で承認を受け、以後原則として継続適用します。土地についての時価評価基準としては、①固定資産評価額による②公示価格による③路線価による④不動産鑑定評価による⑤上記いずれかの価額に比準する価額による、などが考えられます。
今後の事業展開・展望
今回の研究会を通じて、組合特有の会計と税務を理解して頂ければ幸いです。