テーマ : 組合員の労務管理体制について
補助事業名 | 平成30年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 船橋総合卸商業団地協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 飯ケ谷 岐美夫 | |
住 所 | 船橋市高瀬町62-2 | |
設 立 | 昭和52年 | |
業 種 | 卸売業中心の異業種 | |
組合員 | 27人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284) | |
専門家 | 浅山社会保険労務士事務所 代表 浅山雅人(社会保険労務士) |
背景と目的
平成30年度に船橋総合卸商業団地協同組合におきまして、「組合員の労務管理体制」をテーマにした連携組織活性化研究会の内容を報告させていただきます。
厚生労働省が令和1年6月26 日に発表した「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」において、相談件数の25.6%は、「いじめ、嫌がらせ」でトップとなっており、「解雇(10.1%)」「労働条件の引き下げ(8.4%)」「退職勧奨(6.5%)」と比較しても群を抜いており、この傾向はこの数年間続いております。
このように労務管理上で最優先課題として取り組むべきは、「ハラスメント対策」となっています。そこで、ハラスメント対策を講じるうえで大切な7つのポイントを解説します。
事業の活動内容
①トップのメッセージ
・ハラスメントは、企業のトップから全従業員が取り組む重要な会社の課題であることを明確に発信しましょう。
・ハラスメントの防止が、なぜ重要なのか、その理由についても明確に伝えましょう。
■ トップのメッセージの効果
企業として「職場のハラスメントはなくすべきものである」という方針を、トップのメッセージの形で明確に打ち出すことが望まれます。組織として、そのような方針が明確になることにより、相手の人格を認め、尊重し合いながら仕事を進める意識が育まれます。組織の方針が明確になれば、ハラスメントを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題点の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取組の効果がより期待できます。
②ルールを決める
・罰則規定の適用条件や処分内容、また、相談者の不利益な取扱いの禁止などを明確に定めましょう。
・ルールは、従業員にとって分かりやすく、できる限り具体的な内容としましょう。
就業規則などにルールを盛り込む場合には、事前に労働組合や労働者の代表などの意見を聴くことが求められています。就業規則の変更の目的や意義を十分伝え、意見交換した上でルールを決めましょう。
・就業規則を変更した場合は、その内容の周知が義務付けられています。従業員への説明会や文書の配布なども忘れず実施しましょう。
■ ルールの種類
就業規則その他の職場の服務規律等を定めた文書で、ハラスメント行為を行っていた者については、懲戒規定等に基づき厳正に対処する旨を定めます。このとき、ハラスメント防止についてより詳細な規定を定めたい場合は、就業規則に委任の根拠規定を設けて、ハラスメント防止規程を定めることも有効です。
③社内アンケートなどで実態を把握する
・アンケートでの実態把握は、対象者が偏ることがないようにしましょう。より正確な実態把握や回収率向上のために、匿名での実施が効果的です。
・従業員向けの相談窓口を設置している場合は、アンケートと併せて必ず相談窓口を紹介しましょう。
・アンケート以外の方法として、安全管理者や産業医によるヒアリングや、評価面接など個人面談の際に自己申告項目に入れるなど、複数の方法で行うことも有効です。
■ 実態把握の方法とタイミング
職場のハラスメント防止対策を効果的に進められるように、職場の実態を把握するためのアンケート調査を早い段階で実施します。アンケート調査は、ハラスメントの有無や従業員の意識の把握に加え、ハラスメントについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなります。
④教育をする
・教育のための研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要です。中途入社の従業員にも入社時に研修や説明を行うなど、漏れなく、全員が受講できるようにしましょう。
・管理監督者と一般従業員に分けた階層別研修の実施が効果的です。ただし、企業規模が小さいなどの場合は、管理監督者と一般従業員が一緒に研修を受講してもよいでしょう。
・研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、会社のルールの内容、取組の内容や具体的な事例を加えると効果的です。
■ 教育のための研修の内容
予防対策で最も一般的で効果が大きいと考えられる方法が、教育のための研修の実施です。研修は、可能な限り対象者全員に受講させ、定期的に、繰り返して実施するとより効果があります。
⑤社内での周知・啓蒙
・組織の方針、ルールや相談窓口などについて、積極的に、周知に取り組みましょう。
・計画的かつ継続した周知を実施していきましょう。
■ 周知の方法
ハラスメントの防止に向け、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口やその他の取組について周知することが必要です。この周知は、単にポスターなどで伝えるだけではなく、会社が本気で取り組んでいることや、その取組内容を理解してもらえるものでなければなりません。
ハラスメントの定義、具体的な例などを盛り込む一 .人権の尊重、働きやすい職場づくり、組織の活性化、人材の維持/定着率の向上など一 . 組織の停滞、従業員相互間の不信感の増大、人材の流出、業績への影響など
⑥相談や解決の場を提供する
・従業員が相談できるように相談窓口を設置しましょう。
・相談しやすくするために、相談者の秘密が守られることや不利益な取り扱いを受けないこと、相談窓口でどのような対応をするかを明確にしておきましょう。
■ 相談窓口の設置
従業員が相談しやすい相談窓口を設置し、できるだけ初期の段階で気軽に相談できるしくみを作りましょう。相談窓口には、内部相談窓口と外部相談窓口があります。それぞれの窓口がハラスメントを含めたさまざまな相談に対応できると、相談しやすくなります。
【内部相談窓口の設置(例)】
①管理職や従業員をハラスメント相談員として選任して相談対応、②人事労務担当部門、③コンプライアンス担当部門/監査部門/法務部門
【外部相談窓口の設置(例)】
弁護士や社会保険労務士の事務所、メンタルヘルス、健康相談、ハラスメントなど相談窓口の代行を専門に行っている企業。
⑦再発防止のための取組
・再発防止策は予防策と表裏一体です。予防策に継続的に取り組むことが再発防止につながります。
・取組内容の定期的検証・見直しを行うことで、より効果的な再発防止策の策定、実施に取り組みましょう。
■職場環境の改善のための取組
ハラスメント行為の防止に当たり、職場環境の改善のための取組を行います。ハラスメントが起きてしまう要因には、例えば職場内のコミュニケーションや人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化が考えられます。コミュニケーション不足により、異質なものを排除する風土が生まれ、また長時間労働による疲弊がハラスメントへとつながっていく可能性があります。このような状況が考えられる場合は、職場内のコミュニケーションの強化や長時間労働対策を行うなど、職場環境を改善することがハラスメントの予防にもつながります。