テーマ : 売上1.5 倍への挑戦!
成田空港第2ターミナル店舗「ちばぼうきょう」リニューアル
補助事業名 | 平成29年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 千葉県貿易協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 越部 圓 | |
住 所 | 千葉県千葉市美浜区中瀬 2-6-1 WBGマリブイースト23F | |
設 立 | 昭和35年 | |
業 種 | 製造業中心の異業種 | |
組合員 | 58社(平成30年12月1日現在) | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427) | |
専門家 | ハンズオンビジネスサポート研究所LLP 代表 岩瀬 敦智(中小企業診断士) |
背景と目的
「売上を1.5倍にしたいんだ」。常務理事の一言から二人三脚の支援がはじまった。
千葉県貿易協同組合は、県内企業の貿易振興のために構成された組合組織である。基幹事業の一つ「共同販売事業」として成田空港の第一および第二ターミナルに小売店舗を構えている。本稿では、その一つである「ちばぼうきょう(店舗名)」の売上アップに向けた取組を紹介する。
ちばぼうきょうは、第二ターミナルの4階テナントゾーンに位置している。店舗面積は5坪程度。周りには、「ANAフェスタ ロビーギフト店」など、土産用の加工食品や雑貨を中心とした競合店が林立している。そのような環境ではあるが、一定の往来客がいるため、常務理事は好立地と評価。さらなる期待を込めて、売上1.5倍という目標を設定した。
しかし、限られた売場面積で、急激な通行客増加が見込みにくい状態で、売上を高めるには、さまざまな対策が必要である。そこで、売上1.5倍に向けた、「ちばぼうきょう改善プロジェクトチーム」を発足し、計画的に対策を進めることとした。メンバーは、出品者から2社(㈱さわらび、山内興産㈱)、運営メンバーから5人(常務理事、統括マネジャー〈以下、統括〉、店長、事務担当者、アジア人店員)、および専門家3人(中小企業診断士〈筆者〉、デザイナー、PRコンサルタント)、中央会の11人。一丸となって改善を進めることとした。
改善プロジェクトの活動内容
① 「ストアコンセプト設定」で組織内エラーを潰せ!
ちばぼうきょうは、ちばの加工食品や伝統工芸品を取りそろえた店舗である。リニューアル前は、ちばの商品を単に陳列している状態であり、十分にちばの魅力を伝えているとは言い難い状況だった。
そこで、まずプロジェクトチームでちばの魅力を徹底的に洗い出し、ストアコンセプトを再考することとした。ここで大事なことは、どのようなコンセプトにするかもさることながら、コンセプト自体をプロジェクトチームが検討し、設定する行為そのものだった。
筆者が見たところ、出品している組合員企業の経営者(以下、出品者)はいずれも品揃えについて高いスキルを有している。また、店舗運営側も一生懸命取り組んでいる。本来であればちばの魅力を伝える売場づくりが可能なはずなのに、それが進まない理由は、組合組織であるがゆえに、みんなが遠慮しあい共通した方針が打ち出せていないからだと考えた。いわゆる「組織内エラー」である。そのためプロジェクトチームがコンセプトを打ち出し、方針を決定することで、組合員の意識を一つにし、エラーを潰す必要があった。
(リニューアル前の店内)
② プロジェクトチームと出品者の「位置づけ」を明確に!
プロジェクトと出品者の位置づけの明確化にもこだわった。もともと多数の出品者が遠慮しあい前に進まない状態を解消するために、推進役としてプロジェクトチームを結成したにも関わらず、プロジェクトだけが先走り、肝心の出品者が置き去りになると、出品者の意識を一つにするという目標は達成できない。そのため、出品者に対して、コンセプトの再定義をおこなうことを提示した上で参集してもらい、侃々諤々、議論をする場を整えた。これは簡単なようだが、一筋縄ではいかない。出品者は各々が忙しく、一堂に会してもらうのは至難の業である。また、多くの出品者に集まってもらうために、プロジェクトの中心である、㈱さわらびと山内興産㈱の経営者から、欠席の場合は委任して頂きたいといった文言を招集通知に付加し、多くの方に集まってもらった。あくまでもプロジェクトは、出品者に検討してもらうための案を提示し、意思決定は出品者会議で行うのだという「位置づけ」を明確にすることが重要だった。
③チーバくんハウス誕生秘話!
コンセプトについての議論では、PRコンサルタントの主導で「ちばの逸品と体験を提供する店舗」という点まではすんなりと進んだが、具体的に「ちばの何を象徴にするか」で難航した。ここでも組合組織の難しさがあり、土産菓子、雑貨などアイテムカテゴリーで絞ると出品できなくなる出品者がでてしまう。3プライスショップなどの案もでたが、これも取り扱い商品の金額が合わない出品者に対して不公平である。だからといって、象徴を決めないと、何の店舗かわかりにくいという現在の状況を打破できず、売上アップが見込めない。議論が煮詰まった。その時「外国人顧客にチーバくんグッズが人気」というアジア人店員の一言が流れを変えた。海外に対するちばの認知度は沖縄や北海道に比べると高くない。だが、千葉県貿易協同組合としてこれからちばの認知度を高めていきたい。ここは潔く、千葉を知らない海外の人から見ても、一目でわかりやすいキャッチーなチーバくんを象徴にしようということで一気に方針がまとまった。
やるからには徹底的に分かりやすい店舗に。これは、普段、売場改善支援にあたっている筆者が得た小売店の売上アップの鉄則であり、こだわった。店名は「チーバくんハウス」に変え、パラペットもインパクトのあるものへと変更することとした。ここで活躍したのがプロジェクトチームのデザイナーである。延べ十種類以上のストアデザイン案を短期間に構築、さらにそれをたたき台としてプロジェクトチームの議論に合わせて、即興でストアデザインを精緻化していった。近年、千葉県よろず支援拠点など企業支援にデザイナーの力を活用しようとする動きがでているが、今回、まさに面目躍如だった。結果的に非常にインパクトがある店舗ができあがった。
(リニューアル後の店内)
④品揃えと店内販促を強化!
もちろんハードが変わっただけでは、大幅な売上アップは見込めない。重点商品コーナーを設け、新商品を開拓。店内販促物もコンセプトに合わせたデザインに変更して統一。それを短い期間でやり遂げた。ここで力を発揮したのは、統括と店長という二人の現場責任者だった。こうしてちばぼうきょうは、8月21日に「チーバくんハウス」に生まれ変わった。
事業の成果と今後の展望
リニューアル後の11月現在の売上高は約1.2倍と一定の効果が表れてきた。この水準が継続すれば、ほどなく今回のリニューアルに投資した金額がペイできる。
しかし、目標である1.5倍には届いていない。いうまでもなくプロジェクトは目的志向であり、目標を達成すべく次の一手を検討中だ。今回のプロジェクトを通して、出品者の意思統一が進んだこと、現場責任者のスキルが高まったことが大きい。それらの成果を十分に活かせば、目標である売上高1,5倍もそう遠くない。