テーマ : 組合を活性化する経営革新マインドへの転換

補助事業名 平成29年度連携組織活性化研究会
対象組合等 ネパール産業支援企業組合
  ▼組合データ
  理事長 鈴木 正和
  住 所 千葉県松戸市松戸595番地の12
  設 立 平成25年3月
  業 種 電気機械器具小売業
  会 員 4人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427)
専門家 江塚経営研究所 江塚 修

企業組合の組織と目的

 ネパール産業支援企業組合(以下「ネパール組合」)は、平成25年3月に設立した新しい法人です。
 日本と親しいネパール国に関係する人、興味のある人などの同志が集まり、日本とネパールの「架け橋」になることを目指して企業組合を作りました。
 ネパールは、南北をインドと中国の二大国に挟まれた日本の三分の一ほどの小国です。 北はヒマラヤ山脈(エベレスト山)、南はタライ平原が広がり、標高五千メートル以上の高地もあれば亜熱帯の低地もあり、百を越える民族が共存しています。
 現在は長く続いた王政を脱し民主政治を目指して法整備等を進めています。日本をはじめ各国が法整備を中心にさまざまな支援を行い、ネパールの国づくりをバックアップしています。
 ネパール組合の事業目的は、ネパールの産業とくに手工業を支援し、その担い手の人々(とくに村に住む女性・子供達や大人達)の収入源を拡充していくことを目指しています。
 現在のネパールは、電気をはじめ水道やガス設備等の社会インフラが未整備で、特に電気の供給が不十分で産業らしいものは観光以外に少ない状況です。
 また、2015年4月にネパール大地震が発生し、甚大な被害が出ました。大地震以降観光客は七割も減ったと言われています。

企業組合の事業内容

 そのようなネパール国の産業支援を目指して、本組合も今年3月で満5年となりました。
 創設以来本日まで事業目的である両国の架け橋を目指して、事業面については苦労と試行錯誤を繰り返してきています。
 しっかりとした産業支援をするためには、運営する資金を自ら確保する必要があるからです。
 組合の運営を強化するための事業の一つ目は、ネパールの特産物品の物販事業です。
 ネパール組合では、ネパールの伝統的民芸品の販売によってネパール国の認知度を引き上げるとともに、その売上によって産業支援することをめざしています。

  ネパールの伝統絵画
  曼荼羅(マンダラ)

 具体的には、通信販売のネットサイト(ネパールショップ「アキサ」)を開設し、伝統品など六品目を常時販売しております。また、ネパールコーヒーの輸入販売事業も別途行っています。
 事業の二つ目は、我が国の技術を現地で活かす技術支援活動です。現地には合弁会社を設立し、ソーラーパネルの設置、バッテリー販売やメンテナンスなどの技術支援を行っています。
 事業の三つ目は、国内事業です。ネパール支援をスムーズに進めるための運営資金を集める目的で、組合メンバーが有する技術を活かし「消臭装置レンタル事業」および「バッテリー添加剤販売」という事業を国内で実施しています。

マーケティング勉強会の実施

 ネパール組合は満5年を機に、組合の事業について一旦見直しを図り、従来事業の強化、および新事業の取り組み促進、という方針を決め、そのためにマーケティング勉強会を実施しました。
 勉強会は三回開催しました。
 一回目は、組合の事業強化(収入強化)を目指して、「マーケティングとは」というテーマで、市場(顧客)の絞り込み方、顧客ニーズの把握方法、販売促進手法など、マーケティングの基本を学びました。
 二回目は、「事業企画書」について勉強を行いました。
 組合で現在考えている新規事業について、事業の立ち上げからビジネスモデル構築、具体的なビジネスの詳細などまでを、「企画書」として目に見える形に記載し文章化する、という手法を学びました。
 三回目は、マーケティング理論と「事業企画書」の考え方を活用して実際に組合事業の「企画書」の作成実習を行いました。
 既存事業では「消臭・除菌装置さわやか拡販事業」の事業強化企画の作成を行い、新事業では、「ネパール物品ショップ事業」の新規事業企画書、以上二種類の企画書作成を実際に実施しました。
 とくに大半の時間は「ネパールショップ事業」についての検討を行い、新規事業のビジネスモデル作成にチャレンジしました。

新事業「ネパールショップ」

 ネパール組合が新規の事業として考えているのは、我が国での「ネパールショップ」の設置です。
 組合(本部は松戸市)の事務所がある南砂町近隣にネパール関係の「総合アンテナショップ」を開店する、という構想です。
 在日ネパール人は約六万人、また東京都近隣には多数の親ネパールの日本人がいると推定されます。この両者を顧客対象とした総合店舗の設置です。
 現在は構想段階で、具体的なビジネスモデルができていませんので今回、「新規事業企画書」を実際に作成し(実習)、ネパールショップ実現にむけて準備をしました。
 まず店舗の基本コンセプトの検討からスタートしました。
 六万人の在日ネパール人を「お客様」にすることが最優先ですので、ネパール人にとって「我が家のようにホッとする空間」をメインに据えることにしました。
 一方、親ネパール日本人をどのような形で顧客とし、取り込んでいくか、討議を重ねました。
 日本人向けには、登山愛好家、エベレスト愛好家、山岳観光関係者、仏教関係者、などが興味を示すコンセプトが必要との結論に至り、店舗の一部を「ネパール山岳情報や特産品販売スペース」とすることにしました。
 続いて「本当にお客様がいるのか」、すなわち「市場があるのか」(市場ニーズ)という検討です。
 当組合のネパール人社員の人脈情報によると、在日ネパール人は服飾品、身の回り品、乾物(ラーメン)などに自国品への強いニーズがあり、しかも購入には苦労しているようです。従って、在日ネパール人は物販店ニーズが高い、と見込まれました。
 一方、親ネパール日本人については、特産品販売だけでは顧客として集客できる可能性が低く、ネパールの最新観光情報やエベレストなどの山岳情報などの充実が必要、との結論になりました。
 以上のような検討の結果、「新規事業企画書」として、新事業「ネパールショップ」の具体的ビジネスモデルが明確化してきました。
 取扱商品としては、在日ネパール人向けには服飾品、身の回り品、日用品、食料品とし、極力安く調達し安価で販売をすること、また日本人向けには、山岳の資料や写真、自然公園案内、観光案内、特産品の販売と決定しました。
 宣伝戦略は、在日ネパール人の人脈を有効に使い、口コミを拡げること、日本人向けにはメディアやネットを活用し情報発信を強化し集客促進することにしました。

 今後の事業展開・展望

 企業組合として満五年、これまでも日本とネパールの「架け橋」として、我が国でのネパールの紹介、認知度向上、また現地の産業支援に相応の成果を上げてきました。
 今後は事業面の活動を一層強化し、発展途上国であるネパール支援に注力していく方針です。

(江塚 修)


『中小企業ちば』平成30年6月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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