テーマ : 組合の財源確保のための共同受注事業に関する勉強会
補助事業名 | 平成25年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 千葉県室内装飾事業(協) | |
▼組合データ | ||
理事長 | 髙橋 一美 | |
住 所 | 千葉市中央区本千葉町10-20 DIK703 | |
設 立 | 昭和 49 年 6 月 | |
業 種 | 内装工事業 | |
会 員 | 正会員64人、準会員214人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427) | |
専門家 | 中小企業診断士 清水 透 |
背景と目的
収入が減少している組合は多い。原因は、組合員数の減少による賦課金収入の減少であったり、共同事業のマンネリ化や組合員の業態の多様化による事業利用量の減少などである。
今回、三回の研究会を実施した千葉県室内装飾事業(協)も複合的な原因により組合の収入が減少している例である。打開策として共同受注事業の立ち上げを検討することになった。
事業の活動内容
共同受注事業は、組合が実施する共同事業の中でも難しい事業の部類に属する。その理由は、組合の外からお金をもらう点にある。共同購買事業などでは、組合員が顧客になり、組合員が組合にお金を払う。だから、ニーズも探りやすいし、営業もかけやすい。しかし、共同受注や共同販売事業は組合の外に顧客が存在し、外部からお金を頂戴する。そのため、組合員がビジネスパートナーとして一枚岩になることが求められる。受注あっせんのような事業とは異なり、組合自身が契約の主体になる点に特徴があり、市場で他社との競争に勝たなければならない。クレーム対応も組合が応じなければならない。組合が契約の主体になるということは、全てにわたり組合が責任を持つということである。それを理解しておかなければ共同受注には取り組めない。
そこで、第一回目の研究会で共同受注事業成功のために以下の項目を検討した。
一.どうやって仕事を取るか
ビジネスのはじめの、だれが、どうやって仕事をとってくるか、である。組合が建設業の許可をとって「内装・リフォーム請け負います」と看板を掲げれば仕事が取れるというものではない。
組合として営業を仕掛ける人を雇用するのは先の話で、先ず組合員が自ら、組合の営業をしなければならない。その営業行為に組合員は本気になれるだろうか。自社の営業には本気になれても、組合の営業には本気になりにくいのではないだろうか。
二.組合員の技量を客観的につかめるか
取ってきた仕事を誰に配分するか、という問題である。組合員の技量を的確に把握して、仕事にピタリとあった配分をしなければならない。単純に営業活動をした者が受注するということでよいというわけではない。営業に熱心な者には別の形で報いればよいから、仕事の内容に応じて最適な組合員に割り振ることを検討する。そのために技量の査定は必要である。
三.組合が取った安い仕事を誰がやるか
組合として受注するということは、組合の意思で受注価額を決めるということである。組合員が金額を決めて、それを組合の名前で入札する方法もあるが、それで取れるほど競争環境は甘くないだろう。本気で組合の共同受注を考えるなら、安い仕事を受注できる仕組みを作らなければならない。組合がとった安い仕事でも、施工できる仕組みが必要だ。
景気がよくなると組合の仕事は安くてやっていられないという不満が増え、不況になると組合はちっとも仕事をくれない、という不満が増える。組合員はいつもわがままである。
組合員のわがままには、下請に甘んじるよりは、組合の共同受注の方がましなはずだ、と応じたい。そのことを信じる組合員の間で共同受注は機能する。ぜいたくを言わない組合員が心を込めて育てるのが共同受注事業である。
そのためには心だけでなく仕組みが必要である。以前、どこかの建設業協同組合で落札した仕事を組合内で入札しているという話を聞いたことがある。一億円で受注した仕事を、組合内で入札にかける。もし、組合員の最低額が九千万円なら、組合は一千万円儲かるが、一億一千万円なら一千万円損して、その組合員にやらせるしかない。
組合の共同受注にも、こうした企業経営と同様の「損して得とる」という仕組みの導入を検討する必要があると思う。
四.発注者が組合に発注する理由は何か
組合の強みの裏返しが、発注理由になる。通常、組合の強みは、あらゆる仕事に対応できる間口の広さである。範囲の経済と言ったりスコープメリットと言ったりする。納期の厳しさ、仕事内容の多様さに対応できるのが組合の強みである。言わば仕事のデパートである。
この強みは、発注者にとっては、決定的な魅力ではないから、もう少しインパクトのある強みを持つ必要がある。それは、品質である。組合は組合員の品質向上のための切磋琢磨の勉強の機会を常に設けておかなければならない。
五.組合員が失敗したら後始末できるか
組合が検討すべき強みの方向として重要なのは、品質保証である。組合員の失敗をカバーする仕組みである。内装、リフォームを頼みたいと思っている人はたくさんいる。しかし、どこが信頼できる事業者かわからない。その時、組合の信頼は強みである。その信頼に応える方法を具体的な仕組みとして持たなければならない。
信頼獲得の第一歩が、組合としての社会貢献活動への取組みである。多くの組合で広くおこなわれている。それで得た信頼を、アフターサービスにつなげてPRすれば、信頼は増す。組合なら、確実で万が一のときにも心配ない、というイメージを継続して植え付けなければならない。
官公需適格組合
研究会で、官公需適格組合制度についても検討した。適格組合になれば仕事が取れるのか、という検討である。
受注できるか、という問題と同時にそのための負担がどれくらいになるかという問題もある。建設業の許可を取るには、いくつかの要件をクリアしなければならないし、官公需適格組合としての要件もクリアしなければならない。その中には、事務所を構え専従の職員、技術者などを雇うことも含まれているから、コストがかかる。
コストをかけても確実に受注できるのであれば、検討の余地がある。しかし、それは確実ではない。中小企業対策として官公需適格組合制度があるのだから、適格組合になれば仕事が取れる、と思っている人は多いのだが、そんな保証はない。
官公需の発注担当者が、地元企業に発注したいと考えているのは間違いない。地元外の大手事業者が低価格競争に勝って受注するのではなく、地元業者が受注してくれて、地元の雇用につながるのがベストだと思っている。
官公需適格組合側でも、その期待に応える気持ちはある。
つまり、行政は発注したいと思っているし、組合は受注できるものと信じている。両者は相思相愛の関係にあるのだが、現実は甘くない。
双方の最優先検討課題は、行政は住民利益の最大化で、組合の最優先事項は受注組合員の利益である。ここにギャップがある。適格組合が行政のパートナーとなって住民サービスの最大化を共通の目的にすれば、行政と組合の意思が一致するのだが、今はそうなっていない面がある。
受注あっせん、情報提供
千装(協)の研究会では、以上のような検討をし、最終的に受注あっせん、発注情報の提供により、組合員に貢献するところから、始めてはどうかと提案して三回にわたる研究会を終了した。(清水 透)
『中小企業ちば』平成26年5月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)