テーマ :松戸南部公設市場の場外売り場の活性化に向けての取り組み
補助事業名 | 平成27年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 松戸総合卸売センター協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 佐藤 清 | |
住 所 | 松戸市松戸新田30 | |
設 立 | 昭和46 年12 月 | |
業 種 | 卸売業中心の異業種 | |
会 員 | 16人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284) | |
専門家 | Go West 経営コンサルタント事務所 所長 西 真一 |
背景と目的
松戸総合卸売センター協同組合は、松戸南部市場の乾物、包材、鮮魚、精肉、お茶、海苔、漬物、酒類、業務用食材、生鮮野菜等の卸売事業者で構成された協同組合である。これらの加盟店は場外売り場の扱いであり市場法の適用を受けないとのことである。最近では、郊外大手スーパーの進出による、駅前商店街の衰退などにより八百屋や魚屋といった小売店は著しく減少している。現在では比較的小規模な経営規模の居酒屋、定食屋やショッピングセンターに入店している専門店等が売上の全体規模が著しい減少傾向にある南部市場の売上を支えている。加えて、一般客の売上も市場の運営を担う、いちごマルシェ㈱の集客活動により伸びているが、売上規模はまだ小さく加盟店舗の売上を支えるほどの規模にはなっていない。また、売上の低下に加えて加盟店の経営者の高齢化などの問題もあり一時は空き店舗が場内に目立っていた。
加えて、建屋や設備の老朽化が著しく、建て替えの必要性を訴える組合員は多い。
このような現状に危機感を持った佐藤清理事長は、この数年、空き店舗のスペースを利用して市場に不足していた生鮮野菜の販売店舗を開設。市場周辺に飲食店等を展開しお客様が集まりやすい環境を整えた。また、空き店舗となった場所を買い取り、出店希望を持つ人材に投資を行い安価に貸し与えるなど、市場の活性化を図ってきた。
このような活動により、一般客はこの数年増加傾向にあり、中には、対面接客により商品知識を提供され、市場にしかない高い品質の品物に興味を持ち、まとめ買いをしていくようなヘビーユーザーも出始めている。
本事業の目的は、組合加盟店が考える問題点や本音を聞き出すと共に、来場者はどの様な人達なのか、また、ヘビーユーザーは、どの様な人達でどの様なニーズを持っているのかを明らかにし、使いやすく買い物を楽しめる魅力的な市場にする事でヘビーユーザーを増やしていき市場の売上を支える新しい層を作り活性化を図ろうとするものである。
事業の活動内容
① 組合加盟店経営者間及びいちごマルシェ担当者とのコミュニケーションの醸成(定例会議)
この事業の成功要因の一つに、理事長も含めた組合員同士のコミュニケーションと、いちごマルシェの担当者とのコミュニケーションの醸成があった。その理由の一つは、いちごマルシェのプロモーションやイベントについて事前に組合側に十分に通知されていないことや、組合加盟店の売上には結びつかないようなプロモーションも多いという意見があったことだ。組合加盟店と共に考えることで、より効果的なプロモーションが行えると考えたからである。もう一つは、組合内部の方向性が一つに揃っていないと感じられたことである。アンケートによって、ターゲット顧客が明確になったとしても、組合の意見が割れていると有効な施策が打てない可能性も高い。それだけでなく、
一丸となって問題を解決していこうとする組織は非常に強いことがこれまでの経験や事例からも明らかなためである。
この会議の開催によって、様々なアイデアが出され、様々な問題があることも見えてきた。
②店主アンケートの実施
③来場者アンケートの実施
事業の成果
①店主アンケート結果
アンケート前には、営業時間を夕方まで延長する案が出ていたが、現状では店主や店長が一人で切り盛りしている店舗が多く、午後は配達の時間や調達の時間となっており、営業時間の延長は人を雇わなければならないことから費用の面でデメリットが大きいという認識を持つ人が多いことが分かった。ただし、組合で決まればそれに従うという意見も多かった。また、営業時間を延ばしても最大で午後3時という意見が多かった。また、強みと弱みの認識では、強みは豊富な商品知識と市場ならではの対面販売、品揃え、などを挙げる店主が多かった。
休みと営業時間を統一すべきであるという意見や、プロモーションにおいては、もっと強みを訴求してほしいという要望などが挙げられた。
また、実施した方がよい改善策についての質問では、試食や調理方法の実演などを行うことで素材の使い方や商品知識をお客様に伝えるイベントの開催が効果的であるという意見が多かった。
②来場者アンケートの結果
右の図は興味関心の強い項目と回答者の購入額及び回答者数の関係を示している。これを見ると、「店主との会話」「料理に関心」「天然素材」に関心がある層が、一人当たりの客単価が高い傾向にあることが分かる。これらの層が優良顧客のターゲット層として浮かび上がってきた。
店主アンケートで示された実施したい改善策は、「料理方法の実演」「試食」が多かった。一方、来場アンケートからは「店主との会話」「料理に関心」「天然素材」に関心の高い層の客単価が高いことが判明した。これらの結果から、店頭での試食やセミナー形式の調理実演や体験型の調理実習等の企画を実施し、素材の使い方や酒類の知識を店主が伝えていくようなイベントを開催することで、より客単価の高い層を増やしていくことができるのではないかと推定される。
今後、事業者依存から一般客にも支えられる市場にするため、これらのプロモーションを試験的に実施し、体験者にアンケートを実施しながら効果を確認しつつ、効果的と思われる様々なプロモーションのアイデアを実施することが必要と思われる。
(西 真一)