テーマ :レイクピアうすい ヤオコー対策
補助事業名 | 連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 臼井ショッピングセンター協同組合 | |
▼グループデータ | ||
理事長 | 野口 恭義 | |
住 所 | 佐倉市王子台1-23 | |
設 立 | 昭和 54年 2月 | |
業 種 | 小売業、飲食店中心の異業種 | |
会 員 | 13名 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(TEL043-306-3284) | |
専門家 | 株式会社リテイルマーケティング研究所 代表取締役 浅香 健一(中小企業診断士) |
背景と目的
レイクピアうすいから約1.5kmの距離にイトーヨーカドーがあったが、撤退した。その跡に、ヤオコーがしまむら、ダイソーなどのテナントと伴に、平成22年10月に開店することになった。ヤオコーは、埼玉県に本部を置くリージョナルチェーンである。我が国でも有数のスーパーマーケットチェーンである。ヤオコーのコンセプトは「ライフスタイルアソートメント」と呼ばれ、より豊かな食生活を提案するスーパーを目指している。ディスカウント色は薄いが、顧客満足度の高いスーパーとして有名である。店舗面積は約600坪とレイクピア臼井の旬鮮館を大きく凌駕する店舗面積である。
競合店対策には、様々な考え方があるが、今回は価格競争ではない方法を採ることにした。その考え方は次の式による。
V=Q÷C
V(価値)の値が大きい店ほど顧客は満足し繁盛する
V=価値 Q=品質 C=価格 V(価値)を高めるには、Q(品質)を高めるか、C(価格)を下げるかのいずれかである。現在は、価格競争が厳しく、多くの店がCを下げてVを高めようとしている。ヤオコーはQを高めVを高くしようとしている。
レイクピアでは、次の考え方を採用する。
◎「Q(品質)を徹底して上げる」
・圧倒的な挨拶・笑顔
・圧倒的な鮮度
・圧倒的なおいしさ等
すべてにおいて、今までの基準を上げる。
事業の活動内容
効果的な店舗の革新を図るには、重点的に対策を講じる。組織が小さければ小さいほど集中して改革を図る。
レイクピアの場合は、「圧倒的なあいさつと笑顔」について取り組むことにした。
今までの価値観を捨てる
あいさつと笑顔の改善ではない。「あいさつと笑顔」の革新を図ることが重要である。いままでの改善計画は、「いままでよりは良くなった」という価値観で善しとした。革新は、「はるかに良くなった」というレベルを達成する。そのために、次のような方法を採った。
笑顔の接客の仕掛け
○垂れ幕、バッジの作成
「私達は地域No.1の笑顔と挨拶を目指します」という垂れ幕を作成し、店内に張り出す。また、同じ内容のバッジを作成し、全従業員が胸に張る。
あいさつと笑顔の接客を定着させるためには、店全体が一丸となって実施する体制づくりが必要である。ツールを使うことで、言葉だけの伝達よりは大きな成果が期待できる
○覆面調査の導入
あいさつと笑顔について、月1回、覆面調査会社に依頼し、笑顔と挨拶について、チェックしてもらい、採点することとした。覆面調査を実施することについては、従業員全員に告知をし、報告書に基づいて反省会を実施する。
○笑顔と挨拶を徹底するための朝礼の実施
笑顔とあいさつを習慣としてできるようになるには、訓練も大切である。毎朝、朝礼で声出しと笑顔の訓練を実施した
○メール会員調査
レイクピアうすいでは、メール会員と称して会員制度を実施している。会員になると、携帯メールにお買い得情報等を送信している。そのメール会員に対して、笑顔とあいさつがどの程度良くなったかをアンケート調査を実施した。
事業の成果
○共通認識の統一性
店の価値を高めるためには、Q(品質)を高めなければならないという共通認識を持つことができた。今までは、価格を安くしなければ顧客に支持されないという考え方が強すぎたため、無理な価格設定も実行してきた。Qを高める第一歩としての笑顔とあいさつが徹底できれば、店の価値は上がってくると思われる。
覆面調査の結果では、第一回目の評価より、二回目、三回目とよくなって来ている。また、メール会員に対するアンケート調査でも、以前より接客が良くなったという結果が出た。
当初の目標である、笑顔とあいさつのイノベーションという目標には達成していないものの、今後の努力では、更によくなるものと確信している。
このような取り組みをすると、どうしても個人差が出てくる。どんどん良くなる従業員と、ほとんど進歩しない従業員が出てくる。このような場合、手本となる従業員をみんなの前で褒めてやることが重要である。また、給料や時給に反映させてやることも大切である。人事考課を実施する際に、数値による評価が主流であるが、如何にお客様を満足させたかという人事考課を取り入れていくべきであろう。
○あいさつの自覚
競合店の出店は、店の質を向上させるにはよい機会である。競合店の出店に伴い多くの店が客数減となる。店の従業員全員が「自分の笑顔でお客様を幸せな気分にしたい」という自覚の芽生えた第一歩を踏み出せたと思う。
セルフサービス店は、商品を並べておけばお客様は商品を選び買い物していただける。そのため、接客という意識が低いことも事実である。今回のプロジェクトを通じて、あいさつに対する価値観に変化が見えたことは事実である。
今後の事業展開・展望
○笑顔とあいさつの向上と継続
笑顔とあいさつのイノベーションを目指して、プロジェクトを進めてきた。効果は出たものの、これを継続させることは、更なる努力が必要である。小手先のノウハウではなく、最初の共通認識である「店のQ(品質)を高める」という考え方を忘れないように、今後も継続したい。
○プレゼンテーション
おいしいものは「おいしそうに」鮮度のいいものは「鮮度良く」商品の氏素性を的確に伝えるなど、プレゼンテーション技術を飛躍的に向上させる。中小の小売店は、自店の演出が極端に下手である。レイクピア食鮮館は、商品的には、いいものを持っているため、今後プレゼンテーション技術を高めていきたい。
「差異化」は、小が大に対抗する唯一の方法である。小売店はややもすると、毎日の業務がマンネリになり、いわゆる「つまらない店」「活気のない店」になりかねない。改善はいままでのやり方の前進であり、革新は、いままでのやり方の否定である。
「差異化」「イノベーションをキーワードとして店の活性化を図っていきたい。(中小企業診断士 浅香 健一)
『中小企業ちば』平成23年11月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)