テーマ : 円滑な経営承継のための経営革新について
補助事業名 | 平成24年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 千葉県菓子工業組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 鈴木 豊彦 | |
住 所 | 千葉市市中央区栄町41-3 | |
設 立 | 昭和37 年5 月 | |
業 種 | パン・菓子製造業 | |
会 員 | 415人(平成24年5月現在) | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427) | |
専門家 | 彩マネジメント研究所 代表 長谷川 勇(中小企業診断士) |
背景と目的
① 人と人との絆を強化するお菓子文化
海外旅行で困ることの一つが、おみやげを探すことです。衣類はサイズや好みがあり、アルコールは重く本数制限があります。結局は、チョコレートに落ち着きます。
日本のお菓子は、四季により彩を変え、地域の風土を反映するなど、お土産文化に支えられて成長してきました。
今回は、日本のお土産文化を支え、またお土産文化に支えられて成長してきた千葉県菓子工業組合様向けに行われたセミナーの内容をご報告します。
②迫りくる世代交代の波
団塊世代の大量定年退職の時代を迎えることは、同時に経営承継の時代を迎えることを意味します。経営者の大量引退の時代です。
経営者の引退に備えて、後継者と後継者を支える次期幹部や事業を支えるキーマンの維持・育成の準備が必要です。資産の承継(モノ・カネ)は、経営承継に遅れて発生する資産の相続になります。相続に先立ち発生する経営承継=経営権の交代に備えて、早くから準備に取り掛からなければなりません。経営承継はヒトが対象になりますから、後継者の選抜だけでなく、人材育成も重要な課題で、早期着手・長期計画が基本になります。
事業の活動内容
①贈与税の基礎知識
贈与税や相続税の詳細は、顧問税理士にたずねれば良いでしょう。
尋ねる前に基本的な税制(贈与税)の構造は、経営者としてまた後継者として、知っておく必要があります。
②暦年課税制度
課税制度の名称ですが、相続税対策としての内容は、贈与金額の内非課税枠である年間百十万円を上手に活用することです。
③相続時精算課税制度
2千5百万円までの、贈与税非課税枠を上手に活用すると相続税対策になります。
④教育資金贈与制度
祖父・祖母から孫に、千五百万円まで無税で贈与できる制度です。祖父・祖母が孫に贈与することで、両親の教育費負担を軽減できる制度です。
⑤M&Aと廃業の損得
事業承継対策の一環として、M&Aと廃業を検討の対象として概略を知っておく必要があります。現実に、廃業が多発している以上、目をつぶることは賢明ではありません。廃業の最終手取り額は、M&Aの半分以下と言われています。
⑥幸せな余生を送れる廃業
事業の傷が深くならないタイミングで廃業して、健康を維持し生活資金に余裕を持てる計画的な廃業をします。廃業後は、趣味を持ち社会活動に参加して、社会との絆を大切にします。
⑦廃業は三方の損
廃業の決断は、オーナー経営者の手取り額がM&Aに比べて半分以下になるだけでなく、従業員は職場を失い、仕入先と販売先は取引先を失う「三方の損」の選択です。廃業ではなく、M&Aの可能性を探りましょう。
⑧ドイツの文豪ゲーテのことば
は、時代の波に翻弄されがちな経営者や後継者の勇猛心を奮い立たせてくれます。
・ 財を失うことは小さく失うことである
・ 名誉を失うことは大きく失うことである
・ 勇気を失うことは全てを失うことである
後継者は、名誉のために経営革新を進め、勇気をもって経営革新に挑戦すれば、財は後からついてきます。
⑨経営革新計画をつくる
経営革新計画のテーマを見つけることは、後継者にとり小さな第一歩ですが、経営者になる大きな第一歩です。テーマが見つかりましたら、直ちに計画つくりに入ることは、失敗の原因になります。
交通事故を防ぐには、「左オーライ」、「右オーライ」、「出発進行」が鉄則であるように、経営計画つくりは、「外部環境分析」(競争相手は? 消費者は?)、「内部環境分析」(当社の技術力は? 接客力は? 機械設備は? 商品力は? 資金力は?)を分析して、当社の強み・弱み(実力)を把握して、実力の一段上を目指す計画をつくります。
Plan-Do-Seeの計画つくりを優先するプロセスをさけ、じっくり自社の実力を見極め、競争環境を分析するSee-Plan-Doのプロセスを経れば、実現可能性の高い経営革新計画になります。
法律で定義する革新の「新事業活動」は、
になります。当社の過去と現在を振り返り(己を知る)、競争環境を分析(敵を知る)すれば、競争に負けることなく、経営革新計画は実現するでしょう。
孫子の兵法は、現代に通じる経営戦略に基本です。
⑩経営革新を推進しよう
現経営者は、過去の成功体験・失敗体験に縛られて、現状維持・保守的になりがちです。後継者は、過去の経験を持たないがゆえに、自由な発想で、経営革新を実行しましょう。経営承継は、若い感性を活かす経営革新の絶好の機会です。
事業の成果
今回の経営革新計画のセミナーは、経営権を後継者に継承する際の、経営革新計画の位置付を基調に説明しました。「経営承継+経営革新計画」は、後継者が経営者としての自覚を強固にする、またとない機会になります。先代社長から与えられた計画ではなく、自ら作成した計画ですから、今後の経営の目標となり、計画実現への責任感を醸成することになります。
自分で計画をつくり、自分で結果を出せば、経営者としての自覚が生まれます。経営者として、喜びと苦渋の経験を積むことで、さらに成長します。
今後の事業展開・展望
経営革新計画つくりが初めての場合は、勇気がいるものです。
「小さく始めて、大きく育てる」が鉄則です。毎年修正を加えることで、経験が積み重ねられ、より詳細な計画つくりが可能になります。
計画ができたら、課題別に優先順位を定め、計画実現の方法を定め、スケジュール化します。膠着状態に陥った場合は、中央会に相談すれば、悩みは解決されます。
(長谷川 勇)
『中小企業ちば』平成26年3月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)