テーマ : インバウンドの重要性~魅力的な訪日観光客のおもてなし方法~

補助事業名 平成27年度連携組織活性化研究会
対象組合等 千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合
  ▼組合データ
  理事長 武田 将次郎
  住 所 千葉市中央区富士見2-3-1
  設 立 昭和33 年2 月
  業 種 旅館業
  会 員 328人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 新浜翻訳経営研究所 原田 純

研究会の内容

■ 年間2,000万人に近づく外国人観光客を取り込もう

 【今がチャンス~インバウンドの重要性】
 インバウンドは入ってくるという意味の英語ですが、「外国人の日本観光旅行」=「訪日外国人観光客」のことを言います。
 平成26年に日本を訪れた外国人観光客数は約1,300万人でしたが、平成27年は約2,000万人に達しました。国は平成32年(2020年)に2,500万人を目標としています。
 平成27年の初めごろ「爆買い」という言葉が使われ初めました。旧正月を利用して訪日した中国人観光客が、大量に日用品ほかを買ってくれたので、この名称がつきました。入れ替わるように4月のタイの旧正月では、多くのタイ人が日本を訪れ、一過性と思われた「外国人観光客ブーム」が続いていることが証明されました。
 ブームの原因は円安だと言われていますが、各国の生活水準の向上により、海外旅行する余裕が生まれたことも影響しています。
 昨年の暮れから中国の引き締め政策が伝えられ、また円高の傾向があるものの、中国を中心とするアジアの旅行客がしばらく日本の観光を支えることは間違いありません。
 文化の輸出であるクールジャパンの影響力は私達が想像しているよりも大きく、観光客の興味が分散してきています。したがって、日本中どこでもインバウンドのチャンスがあります。
 北海道をはじめとする外国人サイクリング観光客の増加を見ると、外国人観光客はもはや有名観光地だけに興味を持っているのではないということがわかります。
 初めて日本を団体旅行で訪れるとゴールデンルートと呼ばれる東京- 箱根- 富士山- 名古屋- 大阪のコースを観光しますが、リピーターになると興味が多様化します。
 思わぬことが観光の対象となるのですから、「まちおこし」、「村おこし」をと考えていらっしゃる地域の方には「インバウンド観光」は良いチャンスとなります。どの地域でも外国人の興味の多様化に応える糸口が必ずあるはずです。

■ 集客にはホームページやSNSによる情報発信を

 ホームページをお持ちの商店・宿泊施設・会社が多くなってきました。もし日本語のホームページをお持ちでしたら、そこにまず英語ページを作りましょう。海外の人は予想以上にインターネットを使っています。
 英語ページとまではというところは、写真を多くして、連絡先だけをまず英語にしてください。写真が自ら説明をし、連絡先が英語であれば、興味ある方がコンタクトできるのです。これは現在ホームページが無いという会社/地域にも比較的容易に始められるますので、ホームページに取り組んでください。
 最近は「みんなのビジネスオンライン」をはじめ比較的低価格かつ専門家でなくてもホームページが容易に作れるサービスが出てきていますので、上手に使いましょう。
 またSNS(インターネットを利用した交流サービス)の中では、フェイスブックがインバウンド観光には使い勝手がよいです。こちらが撮った写真を和文と一言英語を添えて公開すれば簡単に情報を発信できます。(写真に旅行客が入る場合は相手の承諾が必要です。)
 口コミが最も影響力の強い誘客方法であると言われます。口コミは感動した顧客が発信する言葉や画像をフェイスブックやホームページで公開することから始まります。口コミを起こすカギは感動であり、顧客へのおもてなしも一要因です。情報発信し、誘客した結果来られたお客様に満足して帰っていただくのが、口コミの元になるというわけです。
 国内外の展示会は費用がかかりますが、効果が見えやすいと言えます。旅行業界の展示会は国内であっても海外の旅行代理店が参加しています。補助金の活用や地域としての出展などで実現したいものです。

■ 言葉と文化の壁を乗り越えて、リピーターを増やそう

 わたしたちと違い、世界には宗教により食材が制限され、行動にも制約がある方たちが存在します。
 例えば、イスラム教徒は豚が食べられませんし、ヒンズー教の方は牛が食べられません。ですから、メニューごとに材料及び調理法を説明するなどの工夫が必要です。
 幸い伝統的な和食はイスラム教徒が受け入れやすいものだと言われます。レストラン、旅館はメニューの品書き、説明書きを英語にすることから始めてはいかがでしょうか。
 接客は日本語だけで通してもよいですが、英語、中国語、場所によっては韓国語ができると販売に結びつきやすいでしょう。
 役立つものとして、ここでは指差しカードとVoiceTra をご紹介します。
 指差しカードは指を指して行う外国語が使えない日本人が、外国人とやり取りするための道具です。小売店やレストラン・食堂ほか接客業で特に効果を発揮します。日本語と各国語を紙の上に予め表にしておくものです。表の最上部横方向に日本語・英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)韓国語と書き、左横の日本語のところに日本語で使う頻度の高い言葉を下に向かって書いていきます。
 書店に行けば指差しカード用の書籍も販売されており、またインターネットで翻訳はある程度できますので、コピー、切り張りなどでどなたでも作ることが可能です。
 VoiceTra は独立行政法人情報通信研究機構が開発しているスマートフォンの無料アプリです。話す方、聞く方の言語をそれぞれ選択して、音声を入力すると自動的に通訳してくれます。音声入力であるところ、スマホでできるところが便利です。

■ 2020年の東京オリンピックの年に間に合うように、今から準備を

 東京オリンピックの年には多くの外国人観光客が日本を訪れます。
 リピーターの方は団体ではなく小グループ・個人旅行として日本国内を旅したいと思われます。そうした方の受け入れをどうするのかを今から考えておくことが大切です。
 アジアの観光客が増え初めた頃は、日本が初めての観光客がほとんどで、ゴールデンルートが大半でした。有名観光地を旅していたわけです。
 一方リピーターやファンが増えると、有名観光地だけでなくその他の地域にもチャンスが広がります。多くの場所を回り、さまざまなことを体験することに興味が生まれるからです。そのため千葉県の全域にチャンスがあります。 
 千葉県は東京都の隣に位置し一部オリンピックの競技も行われるので、一泊で日本の伝統的な民家の生活を体験するなどの企画を作りやすいのではないでしょうか。
 成田空港がある利点を使い、どのようにすれば外国人観光客がもっと地元に宿泊しお金を落としてくれるかを考える時なのです。
 千葉県は東京に近いため東京に泊まり、千葉には泊まってくれないと嘆く方もいらっしゃいますが、興味の多様化に応えることができれば、泊まる方が増えるでしょう。それぞれがまた地域で目標を定めてインバウンドに取り組まれることを願っております。なお、今回は、訪日旅行の両輪である観光とショッピングのうち、後者に関係する免税については取り上げませんでした。ご了承ください。
(原田 純)


『中小企業ちば』平成29年2月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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