テーマ : 組合情報発信力強化に向けた効果的な手法の研究について
補助事業名 | 平成27年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 柏市工業団地協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 藤井 秀美 | |
住 所 | 柏市高田1116 - 35 | |
設 立 | 昭和59 年1 月 | |
業 種 | 製造業中心の異業種 | |
会 員 | 11人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427) | |
専門家 | 有限会社草の実工房すずき印刷 取締役 鈴木 宏治 |
背景と目的
平成26年度にホームページをリニューアルした柏市工業団地協同組合が、紙媒体の組合紹介パンフレットも刷新し、デジタルとアナログ両分野での組合情報発信力を強化する目的で研究会を3回にわたり開催しました。
昭和50年代後半に「柏三勢工業団地」が計画され、その参加企業により柏市工業団地協同組合(以下、当組合)は設立されました。
工業団地が立地する柏市北部地域は、平成17年のつくばエクスプレスが開通、ショッピングセンターが開業し市街化され住宅も造成される一方、東京大学柏キャンパスをはじめとする大学・研究所・産学連携施設などが置かれ、文教地区としての顔を持つ柏の葉エリア等が誕生しています。
商工業は国道6号・国道16号・常磐自動車道が交差する交通の要衝となる地の利も生かし、十余二、根戸、柏機械金属、そして柏三勢といった4つの工業団地を有しています。
近年では会員企業の入れ替わりなども有り、組合員の業種は、金属製品・部品製造業(3社)、木製品製造業(1社)、紙器製造業(1社)、建設生コン製造業(1社)、工業塗装業(1社)、食品製造業(2社)、合成樹脂製品製造業(2社)で構成されています。
● これまでの組合紹介パンフ
従来の組合パンフレットは、紙製フォルダーにA4判片面カラー印刷の各社の紹介チラシを1枚ずつ差し込んでいる様式でした。
紙フォルダーを開くと、11枚のチラシが入っていて、フォルダーには組合の歴史やマップが印刷されています(写真ご参照ください)。
前回版の作成は平成13年頃で、その後の会員企業の入れ替わりにはチラシを差し替えて対応し、事業承継などによる代表者の氏名変更や、ホームページ開設によるURL表記挿入等は「訂正シール」を上から貼っていたため、大半のページにシールが貼られていました。
高級感が有り、会員ごとのデザインフォーマットも統一されており、使い勝手も良さそうで遜色ないパンフレットでしたが、作成から10年以上が経過し、つくばエクスプレスや東大キャンパスなど近隣エリアの変化に対応出来ていないマップなど、情報の古さが目立ちはじめていました。
事業の活動内容
①なぜ組合パンフが必要か?
研究会発足時には組合事務所の片隅に、パンフレットがまだ数梱包残っていました。理由は、「組合ホームページとパンフレットとの整合性がとれていない」、「正直最近は古くさくなって、あまり配布していない」、「単価を抑えるためたくさん作ってしまった」とのことでした。
そこで研究会では、各組合員と新パンフレットに対する質疑応答と意見交換を行い、要望をまとめました。見えてきたのは
- ホームページと同じイメージを使ってトータルコーディネートされたパンフにしたい。
- 組合員はそれぞれ、組合パンフとは別に自社パンフ(会社案内)を持っているので、組合として動く時に活用したい。
- いろいろな業種、異業種がある工業団地をアピールしたい。
- 展示会や行政機関、イベント会場等で配布できる、工業団地・当組合の名刺代わりになるパンフにしたい。
- 発行部数を増やし単価を抑えるのではなく、少部数でも安価に作成したい。
という意見が集約されました。
②パンフレットの内容
前年にホームページのリニューアル事業を研究会としてきちんと取り組んでいた成果もあり、デザイン・コンテンツは当初から「ホームページをベースに紙媒体も作る」ということが明確になっていました。が、「他の工業団地や組合は、どんなパンフレットを作っているの?」という考察も行いました。前述の①~⑤の意見も加味するように決定し、次にコストを抑えるためのレクチャーを行いました。
③制作費を抑えるため
各社の写真は新たに撮影し、きれいなものを掲載したい。団地の全体像が写る航空写真も新しくしたい…ということでプロカメラマンに撮影を依頼した場合の費用を算定しました。しかし予算と各社の撮影希望日時が合わず、また、最近のデジカメで撮影すれば「それなり」の写真が会員企業でも撮れることを紹介し、各自が自社の外観や商品・設備の写真を撮りました。
空撮はラジコンヘリやドローンを飛ばして…と決まりかけていたのですが、研究会開催期間中に「ドローンの落下」が社会問題化してしまったのと、屋根の塗装が劣化しているので古い写真のまま使おう、という意見も出て、結果的にここでも制作費を抑えることが出来ました。
④印刷費を抑えるため
前回は数千部のパンフレットを一度に印刷製本することで単価を抑えたようです。しかし印刷業界も変化しています。これまでの片面印刷チラシの差し込みより、両面印刷してフォルダー代と用紙代を抑え、中綴じ製本した冊子型式の方が安価なことが判明しました。
「組合員の入れ替わり」「掲載情報の陳腐化を防ぐこと」にも対応したかったため、従来のオフセット印刷だけではなく、小ロット対応のデジタル印刷による見積も取り寄せました。
デジタル印刷機はオンデマンド印刷機とも呼ばれ、ざっくりした表現をすると〝高級な業務用プリンター〟であり、最近の機種では従来のオフセット印刷機とほぼ仕上がりに遜色なく、用紙の質も問わないこと等を研究会ではサンプルで確認しました。
事業の成果
組合員が中心となり撮影や原稿を執筆したことにより、長年近隣で事業を行っている他の組合員がどのような仕事をして、どんな設備で製品を作っているのか、どんな経営理念を掲げているのかなどを知る機会が生まれ、まさに連携組織の内部的な活性化が得られたようです。
対外的には、パンフを地域イ ベントなどで配布することによる地域の活性化、名刺代わりのパンフとしての役割が生まれてきます。
そして最も重要なのが、「自社の取引先に配布することで、組合内の他社への発注も展望できる」ことこそが、今後の事業展開として期待されています。
(鈴木 宏治)
『中小企業ちば』平成28年5月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)