テーマ : 消費税の軽減税率制度について
補助事業名 | 令和元年度消費税軽減税率対策窓口相談等事業 | |
対象組合等 | 千葉県内会員組合(R.2.6.30現在) ・事業協同組合 607組合 ・信用協同組合 3組合 ・商工組合 17組合 ・協同組合連合会 7組合 ・企業組合 49組合 ・商店街振興組合 18組合 ・火災共済協同組合 1組合 ・協業組合 14組合 ・商店街振興組合連合会 1組合 |
|
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 業務推進部(℡ 043-306-3283) | |
専門家 | 税理士法人アフェックス 金子 尚貴(公認会計士・税理士) |
背景と目的
令和元年10 月より消費税率が8%から10%に引き上げられ、これに伴い軽減税率制度が導入されました。日本で初めてとなる複数税率制度の導入により、飲食料品を中心とする軽減税率の対象品目や外食等の範囲・POSレジの導入準備など、事前に検討しておかなければならない問題が数多く存在します。
このような状況下、千葉県中小企業団体中央会より依頼を頂き、消費税軽減税率制度の概要と実務上の留意点について講習会を実施しました。
事業の活動内容
①軽減税率制度の概要
初めに、全体のスケジュールです。従来の「請求書等保存方式」は令和元年10月の軽減税率制度導入によって「区分記載請求書等保存方式」に移行されました。また、令和5年10月から「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」に移行する予定です。
実務上の留意点としては、請求書等の記載事項が追加されることです。請求書等を発行する事業者はシステム面での対応を含めた検討が必要となります。他方、請求書等を受け取る事業者においても、消費税の仕入税額控除を受けるための経理処理面での対応が必要となります。会計仕訳の記帳・集計ソフトや税務申告用ソフトの導入や入替えを検討された事業者も数多くあったかと推測されます。
次に、軽減税率の対象品目です。「飲食料品(お酒や外食サービスを除く)」と「週2回以上発行される新聞(定期購読されるものに限る)」が軽減税率の対象となりますが、これらに該当するかどうかの判断に悩むことが少なくありません。
飲食料品にかかる適用税率の判断は売り手が販売時点で行うこととなり、その後、買い手がそれをどのような用途に使用等するかは関係ありません。したがいまして、飲食料品として販売する場合もあれば、飲食料品以外のものとして販売される場合もあるような商品を取り扱う事業者は、販売の際に「何を譲渡するのか」(飲食用か否か)を考え、適用税率を判断することとなります。それぞれの具体例は次のとおりです。
【軽減税率(飲食料品)】
家畜の枝肉 コーヒーの生豆 もみ(米) 種子(飲食用) 水
【標準税率(飲食料品以外)】
生きた家畜 コーヒーの生豆の加工 種もみ 苗木、種子 水道水
また、外食サービスに該当するかどうかの判断も悩ましい点です。軽減税率の適用対象外となる外食については、取引の場所と取引の態様(サービスの提供かどうか)の2点に着目します。すなわち、テーブル・椅子・カウンター等の飲食に用いられる設備のある場所において飲食料品を飲食させるサービスが外食サービスに該当します。
例えば、屋台での飲食料品の販売の場合、屋台が飲食設備を設置し、そこで飲食させる場合には外食サービスに該当しますが、飲食設備がない場合や持ち帰りの場合には外食サービスに該当せず、軽減税率が適用されます。
また、ファストフードやイートインスペース付のコンビニエンスストアでは、顧客に対して店内飲食か持ち帰りかの意思確認等を行うことで、外食サービスに該当するかどうかを判断します。最近、コンビニエンスストアなどに設置されているイートインスペースについて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から「当面の間、利用不可」としているようなケースがあります。この場合、実態として顧客により飲食に用いられていないイスやテーブル等については飲食設備に該当しないこととなります。したがいまして、イートインスペースを「利用不可」とした場合には、他に飲食に用いられる設備がないのであれば顧客への意思確認等を行うことなく軽減税率が適用されます。
②請求書等の記載方法
従来の「請求書等保存方式」では、下記の記載が必要とされていました。
書類の作成者の氏名・名称 資産の譲渡等の年月日
課税資産の譲渡等に係る内容
課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)
書類の交付を受ける事業者の氏名・名称
令和元年10月から導入された「区分記載請求書等保存方式」では、右記に加え、軽減対象資産の譲渡等である旨と税率ごとに合計した対価の額(税込み)の記載が必要となります。仮に、これらの記載がされていない請求書等を事業者が受け取った場合には、受領した事業者にて追記することでも可能とされています。
③経過措置
消費税率引上げに伴い、以下形態の取引(例示)については経過措置が適用され、契約時期等によって適用される消費税率が異なります。
・旅客運賃等
令和元年9月30日までに購入した場合には、利用が令和元年10月1日以降であっても、8%が適用されます。
・工事の請負等
平成31年3月31日までに締結した工事等の請負契約については、原則として8%が適用されます。ただし、当該契約について、平成31年4月1日以降に増額変更を行なった場合には、増額部分に対して10%が適用されます。また、工事の請負以外にも、製造の請負やソフトウェア開発など工期が長期にわたり、引渡しが一括で行われる契約に対しても経過措置の対象となります。
・資産の貸付け
契約を平成31年3月31日までに締結し、令和元年10月1日前から継続する資産の貸付けについて、一定の要件(紙面の都合上、割愛します)に該当する場合には8%が適用されます。ただし、当該契約について平成31年4月1日以降に金額変更を行なった場合には経過措置の適用はなく、10%が適用されます。
事業の成果
具体例を織り交ぜながらお話しさせて頂いたことや、講習会終了後に質疑応答の機会を設けたことで、受講者の方々には概ね好評を頂けたかと思います。
受講者の方々の声としましては、制度の複雑さを再認識した、実務上の対応が大変である、といった声が多く聞こえてきました。軽減税率制度がかなり複雑であることは導入時から想定されていたことであり、必ずしも税の専門家ではない一般の事業者の方々が自力で運用していくことは容易ではありません。したがいまして、本事業をはじめとした外部支援を積極的に活用していくことが肝要かと思います。
今後の事業展開・展望
新型コロナウイルス感染症の影響により移行時期が延期となる可能性もゼロではありませんが、今のところ令和5年10月から「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」へ移行される予定です。現行制度でも対応が難しいところ、さらに制度が複雑化されます。事業者の方々におかれましては、周囲の動向に注視しながら、各々どのように対応していくのか、具体的にどういった準備が必要なのかを想定し、必要に応じて各種専門家を活用して頂ければ幸いです。