テーマ : 「軍郷から学都へ」習志野おおくぼ今昔物語

補助事業名 平成28年度連携組織活性化研究会
対象組合等 大久保商店街協同組合
  ▼組合データ
  理事長 三橋 正文
  住 所 千葉県習志野市大久保1-16-11
  設 立 昭和52年5月
  業 種 小売、飲食業中心の異業種
  会 員 77人
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284)
専門家 習志野市文化財審議会会長、東邦大学付属東邦中高等学校  山岸 良二

背景と目的

 ■習志野・大久保

 今から約百二十年前の明治三十年代に日本で初の「騎兵旅団」四連隊二旅団編制がこの大久保に設置された。この時期は、日清戦争で勝利し、三国干渉をうけて、来るべく日露の激突が必然視されていた。その時後に「日本騎兵の父」と称される秋山好古の提言により、この騎兵旅団創設となった。秋山好古は伊予・松山で生まれ、陸軍に入り、騎兵を専門とした。その後、欧州に留学、当時の最先端騎兵戦術を学んで帰国した。当時、ロシアのコサック騎兵は「世界最強」と言われ、戦端必至の日本陸軍にとってこのコサック騎兵とどう対処するかが最大課題とさ
れた。その時、秋山の提言による「日本最初の独立した騎兵旅団」創設となった。
 騎兵二個旅団が置かれた大久保は、一躍大兵站地として旅団出入りの「野菜商」「肉屋」「兵具屋(ムチ、馬具、クラ、蹄鉄、長靴など)」「軍服屋」「時計屋」さらに出陣間際に会いにくる家族連が宿泊する「宿屋・旅館」「食堂」「風呂屋」など活況を示した。
 戦後、これら騎兵連隊跡は西から東邦大学、日本大学生産工学部、東邦大学付属東邦中高校、習志野市民の森になっている。

習雲山薬師寺門前建立の秋山好古像

 ■NHK「坂の上の雲」

 平成二十一年NHKは「坂の上の雲」を放映開始した。このドラマは、「一ドラマを3年計十三回」で放送する斬新なドラマであった。しかも、この原作者・司馬遼太郎に「この小説は映像化できない作品」と言わしめたものを、NHKは「原作に忠実」「出演者が史実の人物に極似」さらに、全体の九割がロケでしかもその8割が海外ロケという壮大なドラマ制作を意図した。主人公は三人で、明治初期伊予松山出身の秋山好古は「日本陸軍騎兵の父」といわれる騎兵の生みの親、その弟秋山真之は日本海海戦で「七段構えのロシア艦隊撃滅計画」を考案し大勝利に導いた人物、そして三人目が真之の幼馴染で「日本の俳諧を改革」した正岡子規である。
 このドラマ放映が決定すると、大久保商店街では三橋正文理事長を中心に、「大久保と縁の秋山好古将軍の事績を広く喧伝し、商店街振興を進める計画」を大々的に進めることを決定した。
 実はこの動き以前から、同商店街では平成五年「騎兵の街路灯」が設置された。現在も商店街エンブレムとなっている「騎兵デザイン」である。同年、歩道部分も「赤御影石」での舗道整備も行われた。

事業の活動内容

 ■「商店街の取り組み」その一

 平成十七年「お休み処」と呼ばれる歴史文化交流施設を商店街中央に新設し、「大久保関係」「習志野騎兵関係」「秋山兄弟関係」の資料・史料を精力的に収集した。丁度、その頃日本大学生産工学部で新図書館建設工事中に「騎兵第十四連隊」銘礎石が発見され、当時の大谷学部長の見識と尽力で、学部一角に「騎兵第十四連隊顕彰碑」が集約されることになった。これに、触発され隣接する東邦大学でも塀を隔てた地点に「騎兵第十三連隊関係碑」を集める事業が進んだ。因みに、「お休み処」は平成二十五年習志野市・東邦大学と「三者地域連携協定」締結の成果として、現在の地に移転し「新お休み処( 商学交流連携センター)」としてリニューアルしている。

 


 ■「商店街の取り組み」その二

 次に商店街が取り組んだ事業が、「秋山好古像」を先に設営した「お休み処」斜め前、習雲山薬師寺門前に建設する計画であった。平成二十年に完成、森田県知事、荒木市長をはじめ陸上自衛隊習志野空挺団儀杖隊ラッパ手の演奏で華々しく除幕披露となった。さらに、日本大学生産工学部川岸研究室の制作により、「習志野騎兵旅団司令部建物復元模型」も完成し、平成二十三年習志野騎兵旅団司令部跡地に開設された同市市民プラザ大久保のロビーに展示されることになった。そして、次に実施したのが「秋山好古」「秋山真之」両将の肖像画復元で、記録に残る白黒写真から当時の軍正装に忠実に復元したカラー肖像画を製作した。これらは、現在「お休み処」と習志野第一空挺団空挺館、そして「坂の上の雲」放映後大久保と密接な関係をもつ愛媛県松山市「秋山兄弟生誕地記念館」に掲示されている。

新お休み処

 事業の成果

 ■「商店街の取り組み」その三

 一方、番組放映もそれなりの視聴率を上げだした平成二十三年同商店街を中心に『秋山好古と習志野』( 山岸良二監修・四六版、百四二頁)という啓蒙書を刊行、千五百部完売という華々しい成果もあげた。
 そして、平成二十四年日本大学生産工学部で「秋山好古をめぐるサミット」大講演会を商店街主催で開催した。この講演会には、松山市坂の上の雲ミュージアム徳永学芸員、上越市北方文化博物館神田氏を招聘し、筆者ら計五名で約三百名の聴衆を前に白熱の討論が行われた。この日本大学とは毎年春商店街主催の「観桜会」会場であり、秋収穫祭の神輿場としても密接な関係をもっている。

お休み処の講演会

 今後の事業展開・展望

 現在、商店街では春の「観桜会」、夏まつり、秋の「収穫祭」を主催し、毎回多数の参加者で会場は大賑わいである。さらに、七年前の平成二十二年からは千葉氏ゆかりの飛騨郡上八幡との関係から、夏祭りに「郡上おどり」を取り入れる企画も進めている。さらに、月一回の「歌声サロン」や「レコードを聴く会」など地域に密着した試みも開催している。今後も、日々約六千人の学生が闊歩する大久保商店街は、新たな挑戦を進めていく。

(山岸 良二)


『中小企業ちば』平成29年10月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)

 

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