テーマ : 飲食店事業の売上拡大に向けた研究

補助事業名 平成25年度連携組織活性化研究会
対象組合等 企業組合ワーカーズ・コレクティブ樹
  ▼組合データ
  理事長 亀本 正美
  住 所 千葉市美浜区真砂5-21-12
  設 立 平成25年 4月
  業 種 その他の食料品製造業
  組合員 42人(平成25年6月現在)
担当部署 千葉県中小企業団体中央会 工業連携支援部(℡ 043-306-2427)
専門家 ガーデニング・コンサルティングオフィス
代表 伊藤 壮平(中小企業診断士)

背景と目的

 企業組合ワーカーズ・コレクティブ樹(みき)は、千葉県のワーカーズ・コレクティブ(企業・行政主導でない生活者の視点に立ったニーズに応える、市民参加型の出資・運営(経営)・労働を一体とした事業活動を進める協同事業体)4拠点が統合する形で平成25年に設立、千葉県内の生活クラブ生活協同組合の食料品・生活用品販売店舗「デポー」8拠点の運営委託を中心に、また独自事業として仕出し弁当及び惣菜の製造販売・配達、及びカフェの運営を実施しています。
 カフェは平成23年にオープンした「デポー園生(千葉市稲毛区)」の敷地内に併設されていた喫茶店舗の運営をワーカーズ・コレクティブ樹で引き継ぎ、「Cafe Cache-Cache(カシュカシュ)」として、主要メンバー5名各々の得意分野を持ち寄りスタートしました。生活クラブの安心・安全な食材を用いた、メインを3種類から選べ、日替わり小鉢が3種類ついてくる手作りランチや、ベルギー産のクーベルチュール使用のガトーショコラ、国産鶏種の新鮮な健康卵を使用したシフォンなどのケーキ類、無農薬栽培のコーヒーが主なメニューです。また月2回営業前の時間を使った近隣の高齢者向けの「歌声カフェ」や、大きなテーブルを活用した木目込み教室なども開催しています。営業時間は月曜から土曜の11時~17時(土は16時)までです。
 勉強会前に、課題としてメンバー間で認識していたのは、下記のような点でした。
・売上の向上
・集客(リピート率の向上と新規集客)
・メニューの幅(人件費との兼ね合い)
・家賃負担(固定費負担)
 勉強会では特に、売上=客数(新規顧客+既存顧客×来店回数)×客単価(商品単価×注文点数)に分解して考えた上で、「いくらバケツに水を汲んでも、穴が空いていれば意味がない」ことから、最初に重要視すべき「既存顧客の来店回数の向上」を中心に今後の施策について議論を重ねました。

事業の活動内容

勉強会初日

 メンバー達は当初、隣接するデポーの利用者が多いので、この店も「安心・安全」である、と顧客に理解が得られているはず、という認識でしたが、当初のメニューは文字中心であったり、商品の「売り」が入っていなかったり等とお客さまに折角の「価値」が伝わっていないものになっていました。コーヒーについても、無農薬栽培の良質な豆をハンドドリップで抽出したものを提供していますが(このことも顧客に積極的に伝えていませんでした)、人が充てられないとの理由から食後に顧客がコーヒーポットからセルフサービスで取りに行く必要があるなど(これについては直後に改善を頂きました)、顧客との接点構築に活かせる部分を自ら無くしてしまっていました。
 そこでコンセプトメイキングがはっきりしている他店舗の事例を挙げながら、「ターゲット顧客層」「顧客の求める価値とは」「店頭・店内・場面別の価値の伝え方」等について、どのような点が優れているか、自店に取り入れられる部分はないか等、ディスカッションを行いました。

勉強会2日目

 2日目は計数管理を中心に勉強会を実施しました。現状の原価構成から、限界利益で家賃などの固定費を賄える損益分岐点を算出し、売上目標を達成するためには何食の販売が必要か、売価・原価・経費それぞれの面から改善策がないかを検討しました。
 併せて毎日の各人の作業内容をまとめてもらい、メンバー間で作業内容・手法の偏りがないか、及びデイリー・ウィークリー・マンスリー、手待ち作業に分類し、担当者間及び日々の作業の平準化・標準化が図れないか検討を重ねました。
 また前回の勉強会から継続して、店舗及びメンバーの持つリソースを活用して、お客さまに対しての店のコンセプト「誰(ジオ・デモ・サイコ)に」「何を」「どうやって提供するか」について、話し合ってもらいました。その中で『生活クラブの安心安全な食材を用いた』『手作りの』『みんなで寄り合う森のカフェ』といったキーワードが浮かび上がってきました。
 近隣に中華料理店やうどん店があり、価格の安いランチ等を提供しているため、競合では?何か対策が必要では?と当初メンバーは考えていましたが、コンセプトを考えてゆくにつれ、全くターゲットが異なる業態であり、引っ張られてしまうのではなく、お客さまへの自店ならではの価値提供・伝達をしっかり行って、リピート率を高めることが重要であることが認識できました。

勉強会3日目

 今までの外部環境分析・内部環境分析を踏まえ、今後のアクションプランを検討しました。
①土台固め
  作業の標準化・平準化、基本レシピの策定(原価も考慮)、売上データの収集、コンセプトの共有
②メニュー改善
  店のコンセプトに沿った、「売り」となるメニューの開発
③メニューブックなど価値伝達方法の見直し
  商品のこだわり・価値などが分かりやすく伝わる体裁に
④知らせる
  ショップカード・パンフなど店舗に来店された方へのツール(店の価値を記憶してもらう、広めてもらう)や、店頭スタンド・のぼり・看板等、店の前を通る方や近隣の方のためのツール(店を認識してもらう)の整備
 その上で他店舗のメニューブックなどの販促ツールを題材として、価値が伝わる販促ツールについてディスカッションを行いました。

事業の成果

27-03-01 勉強会を経て、メニュー面では定番メニューに加え、新メニューとして、より安心・安全・健康を意識するターゲットに向けた限定ランチを販売開始しました。
 また商品名だけだったメニューブックは、商品の写真とこだわりのポイントの記載や、無農薬栽培のコーヒーのこだわりのページが設けられ、より分かりやすく顧客に価値が伝わるようになりました。店頭スタンドやのぼりも設置され、店の認知度向上に一役買っています。
 重ねて、ワーカーズ・コレクティブ樹で運営する他のデポーでもケーキを販売することになり、売上チャネルの増加やアイドルタイムの効率活用が図れるようになりました。店内で展示・販売している雑貨の作家さん達を招いた実演イベントを月1回開催するなど、新しい集客の試みにも積極的に挑戦しています。
 ワーカーズ・コレクティブという「みんなで作り上げてゆく」事業体の為、ドラスティックな試みに至るには中々難しい面もありますが、一歩一歩着実に歩みを進めています。
 お近くにお越しの折は森のカフェ「Cache-Cache」に足をお運びいただければ何よりです。(伊藤 壮平)


『中小企業ちば』平成27年3月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)