テーマ : 商店街の将来構想と空きテナントの有効活用について
補助事業名 | 平成26年度連携組織活性化研究会 | |
対象組合等 | 新鎌ケ谷ふれあい街づくり協同組合 | |
▼組合データ | ||
理事長 | 井手 勝則 | |
住 所 | 鎌ヶ谷市初富862-24 | |
設 立 | 平成 25 年 6 月 | |
業 種 | 小売業、飲食業中心の異業種 | |
組合員 | 22人 | |
担当部署 | 千葉県中小企業団体中央会 商業連携支援部(℡ 043-306-3284) | |
専門家 | 中小企業診断士 春名 芳郎 |
背景と目的
新鎌ヶ谷ふれあい街づくり協同組合は、千葉県の北西部、北総台地のなだらかな緑の大地の上に広がる鎌ヶ谷市のほぼ中央部に位置しており、東武野田線、新京成電鉄、北総鉄道、成田スカイアクセスの4線が交わる新鎌ヶ谷駅を中心としたエリアにある大小合わせた店舗等の集合体です。新鎌ヶ谷駅は1991年の開業で、周辺は新しい街です。平成22年4月に前身である新鎌ヶ谷商店会(任意組織)を発足させ、夏祭り、農産物直売、福引セール等の活動を行いながら、徐々に会員数を増やしました。その後、商業集積地として、更にはまちの顔として秩序ある発展を目指して、平成25年に組織を組合へ移行させました。
新鎌ヶ谷は、柏、船橋、松戸、津田沼、千葉、東京都心に直結するなど交通アクセスの良さから、新興住宅地には新しい住人が多く転入してきています。しかしながら、そうした広域な商圏を抱える商業都市に、最寄品の購買も含め買い物客を流出している状況にあります。これまでに新しい店舗がそれぞれに開店してきた経緯から、新旧いずれの住民からも「どこにどんなお店があるのかわからない」、「遠くの親戚や知り合いに贈り物やお土産をあげたいが、地元の品物にはどんなものがあるのかわからない」、「周辺の都市に比べて地元のグルメ等を紹介した情報がない」といった声が寄せられていました。
周辺都市と比べて知名度が低く、メディアにも取り上げられる機会が少ないことから、地元志向の良いお店や商品があっても地域住民への情報が届けられていないという思いがありました。鎌ヶ谷の知名度向上のためにも、商店街組織としてどのような取り組みをしていくべきかを考えるために今回の事業活用に至りました。
事業の活動内容
①新鎌ヶ谷の現状を共有する
先ずは、新鎌ヶ谷の「現状」、とりわけ他所と比べた「自慢できるモノ、コト」について意見を出し合うことから検討を始めました。「緑が多い」、「地震でも揺れにくい街」、「大根、イチゴ、梨等の農産物」、「駅の数が多い」、「子育てしやすい」、「大仏がある」など様々な意見が出され、「知る人ぞ知る」多くの街の魅力が明らかとなりました。
②事業の方向性を決める
「街の魅力」を整理したところ、農産物に増して、加工食品を挙げる意見が多いことが分かりました。他所でも珍しい「梨ブランデー」や「梨ワイン」から地元の方々が一押しの「どら焼き」まで。
当組合では、駅前にある「アクロスモール新鎌ヶ谷」内に組合の活動拠点としてアンテナショップを開設することを、年度当初から考えていたため、鎌ヶ谷市民が自慢できる鎌ヶ谷で作られたモノ(鎌ヶ谷ブランド品)の情報発信拠点として活用することが決まりました。
③事業の具体案をまとめる
鎌ヶ谷ブランド品の認定基準や認定方法、認定された商品を示すロゴマーク等が井手理事長のリードで決めた後、アンテナショップを「鎌ヶ谷ブランド館」と名付けました。鎌ヶ谷ブランド品を集めること、集めたブランド品と当ブランド館周知のためのイベントを開催することなどが具体案として盛り込まれました。
④補助金の活用を図る
鎌ヶ谷ブランド館と鎌ヶ谷が誇る商品等の周知のためのイベントについては、全国商店街振興組合連合会からの「にぎわいづくり補助金」を活用することとしました。事業の方向性から具体案までを構築したところで、補助金申請に合う内容をピックアップして申請したことから、スムーズに手続きを進めることができました。
事業の成果
平成26年10月には、補助金を活用して鎌ヶ谷ブランド館のオープニングイベントを開催し、地域の農産品も合わせて約200品目を揃え多くのお客様を迎えました。
翌11月には、地元の鉄道会社とも連携してミニ電車を走らせることで、多くの子ども連れのお客様に当ブランド館の存在をアピールしています。
ブランド品の品目数は、オープニング当初130アイテムでしたが、1年弱(7月現在)で300アイテムと認定数を増やしています。もっと多くの認定商品を並べたいとの思いもある一方で、「鎌ヶ谷ブランド」を確立するためにも基準を維持していくことも重要であるとの考えもある様です。しかしながら、お客様にとっては、品揃えも重要な来店要因となりますので、組合会員が取り扱う千葉県産商品に限っては、「鎌ヶ谷ブランド館推奨品」として取り揃えるなど工夫も凝らしています。現在のおすすめ品(認定品)は、地元の中華まん専門メーカーの豚まん・あんまんであり、同市産業フェスティバル開催期間だけで数万個以上も売り上げる地元の人気商品です。他にも当ブランド館でしかバラ売りされていないソース、全国的にも珍しい梨ワインや梨スパークリングワインなどが売り上げを伸ばしています。
マスコミで取り上げられたことなどにより、近隣にある大手大型店からの申し出でコーナー出店を行ったことは地域の中小企業がブランド館の下に結束したことによる大きな成果であると言えます。(残念ながら、コーナーの棚を管理する観点から現在は中止となっています。)県外からの視察も受け入れることもあるなど、知名度も徐々に広域化してきています。最も大きな成果としては、「地域のお店」として近隣に多く住む高齢者にも認知されてきていることにあります。最近では、1~2週間に一度は必ず来店し、いつも決まった商品を購入され、店員との会話を楽しんで帰って行かれる様なリピーターも徐々に増えてきています。
今後の事業展開・展望
今後の課題としては、協力者あるいは賛同者をいかに増やしていくかが重要です。当ブランド館の目的は、「鎌ヶ谷のブランド力を高めること」ですが、運営には補助金ではなく当組合の自主財源で賄われています。継続していくためには、売上からの利益を確保しなければなりません。そのためにも、当ブランド館の目的に賛同し、協力していただける地元中小企業の経営者を増やすこと、そして、更に多くの地域のお客様にもご理解の下、利活用していただくことが重要な課題であると言えます。
今後は、福嶋館長のネットワークを活かして更なるブランド品の発掘や農産品等への拡大も考えられています。また、当ブランド館、ブランド品の更なる認知度向上のため、ホームページや口コミを活用していくことが必要です。
鎌ヶ谷ブランド館と鎌ヶ谷ブランド品が、それぞれ地域住民にとって井戸端会議の場であり、地域外に対して鎌ヶ谷の誇れるモノとなるよう、更なる知名度向上と発展に期待がかかっています。(春名 芳郎)
『中小企業ちば』平成27年10月号に掲載 (※内容・データ等は掲載時の物です)